タワー式をはじめとする機械式駐車場の雨漏りは、建物の外壁だけを見ても全体像をつかみにくいことがあります。とくに装置の内部は、ふだん車を出し入れしているだけでは状態が分かりにくく、雨漏りや錆が進んでから気づくことも少なくありません。
今回ご紹介する保守契約物件での現地調査では、建物の上部(屋上や、塔屋と呼ばれる最上部)をドローンで確認しました。あわせて、内部最上部やパレット側の水染み・錆の状態も確認しています。すべてのタワー式駐車場で起きるわけではありませんが、進行する前の劣化を定期的に確認し、適切な時期の保守につなげる観点として参考になる一例です。
重要なのは、雨漏りを「建物の防水だけの問題」として終わらせないことです。水が装置内部へ入り込むと、パレット、フレーム、ボルト、電装まわりに影響が広がる可能性があります。施設オーナーや管理会社にとっては、外装の劣化と機械側の劣化を同じ現場で見比べることが、早期判断の材料になります。
外壁だけでは見えない機械式駐車場の雨漏り
駐車装置の内側で起きる水染みと錆を確認する
一般的なビルの雨漏り確認では、外壁、屋上防水、シーリング、サッシまわりなどの建築側が主な確認範囲になります。しかしタワー式駐車場の場合、その内側には車両を載せるパレットや昇降機構、制御に関わる部品があります。
今回の現地調査では、内部最上部の複数箇所で壁面の水染みが確認され、パレットにも錆が見られました。外から見た劣化箇所と、内側で水が出ている位置を照らし合わせることで、雨水がどこから入り、どこへ影響しているかを推定しやすくなります。

タワー式駐車場の基本的な仕組みや保守の見方は、(参考:タワー式駐車場のメンテナンス)でも整理しています。雨漏りの有無だけでなく、装置のどの部位に影響が出ているかをセットで見ることが大切です。
ドローンで上部を確認する意味
足場を組む前に、屋上・外装まわりの劣化箇所を絞り込む
屋上や建物上部は高所のため、地上や通常点検の範囲からは状態を確認しにくい部分です。ドローンを使うと、屋上面、外装の継ぎ目、ネジやジョイントまわりの状態を、足場設置前に把握しやすくなります。
今回の調査でも、外壁側のネジの錆や潰れ、外装の継ぎ目付近の劣化が確認されています。ただし、写真だけで漏水経路を断定することはできません。ドローンで疑わしい箇所を絞り込み、内部の水染み位置と照合し、防水業者などの専門確認につなげる流れが現実的です。

大雨や梅雨時期には、普段は目立たない水の入り方が表面化することがあります。雨季の点検観点については、(参考:梅雨時期に機械式駐車場を安全に使うための注意点)もあわせて確認してください。
錆はパレットだけの問題ではない
水の入り方によっては機械・電装・利用者対応にも影響し得る
タワー式駐車場は原則として屋内環境のため、パレットの錆は屋外の風雨による自然な錆とは事情が異なります。考えられる主な原因は、雨漏りによる水の侵入か、入庫した車のタイヤが運び込む雨水や付着物(路面の融雪剤など)の2つに絞られます。今回の錆は雨漏りが確認された箇所に近く、水の侵入が疑われます。
パレットに錆が出ている場合、見た目の問題だけでなく、腐食の進行、錆汁の滴下、車両への汚れ、将来的な補修範囲の拡大につながることがあります。雨水が上部から継続的に入る環境では、塗装や表面補修だけでなく、発生原因の確認もしておくと安心です。

特にタワー式駐車場では、上部で発生した水が内部を伝って別の階層に現れることがあります。今回の調査でも、最上部の壁面、複数段下の壁面、特定パレットの錆が確認されており、水の入口と影響箇所が一致しない可能性を前提に見ておくと判断しやすくなります。また、パレットの構造や補修できる範囲はメーカーの仕様によって異なるため、自社設備のメーカー仕様を個別に確認しておくと確実です。
錆や塗装劣化の考え方は、(参考:機械式駐車場の塗装工事)にも通じます。ただし雨漏りが続いている場合は、塗装だけで問題が止まるとは限りません。防水・外装・機械側の確認を分けて考えておくと、状況を整理しやすくなります。
管理会社が最初に確認すること
雨漏り補修の前に、機械側の影響範囲を記録する
施設オーナーや管理会社が最初に整理しておきたいのは、雨漏り箇所を一つの写真で済ませず、位置関係を記録することです。屋上・外壁側の劣化箇所、内部の水染み、錆が出ているパレットやフレームを、階層や位置が分かる形で残しておくと、次の調整が進めやすくなります。
確認時には、現在の保守会社、防水業者、建物管理側の担当範囲を整理します。機械式駐車場の保守会社だけで防水工事まで完結するとは限らず、防水業者だけでは機械側の影響を判断しきれない場合もあります。役割を分けたうえで情報をつなぐことが、再発防止の判断材料になります。
保守会社の種類や相談先の考え方は、(参考:機械式駐車場のメンテナンス業者の種類)でも解説しています。雨漏りや錆が機械側に及んでいる可能性がある場合は、独立系専門業者へのセカンドオピニオンを取り、補修範囲を整理する方法もあります。
今回の取り組みは、ドローンを使って屋上・外装側を確認し、同時に内部の機械側も見るという点に特徴があります。
こうした調査から、提携する防水業者と連携した補修施工、その後の保守点検までを一貫して引き受ける事業者もあります。窓口を分散させず、外装・防水・機械側を一つの主体で整理できると、施設オーナーや管理会社の負担を抑えやすくなります。
雨漏りや錆は、通常の建物点検では見落とされやすい部分です。だからこそ、外装側と装置内部の両方を定期的に確認しておくことが、被害が大きくなる前に保守の判断を下す手がかりになります。まだ補修結果や長期的な効果を語る段階ではありませんが、ふだん見えない駐車装置側のリスクを早い段階で把握しておく視点は、これからの点検にも役立つはずです。
出典・参考資料
- 保守契約物件の現地調査資料「タワー式駐車場の塔屋まわり雨漏り確認」(2026年6月実施)。本記事掲載の写真はいずれも同調査によるものです。
- 社内検討メモ「構造物の雨漏り確認と機械式駐車場への展開案」(2026年6月)。
第二種電気工事士・消防設備点検資格者。機械式駐車場の保守点検・緊急故障対応を25年にわたり現場で経験。部品の調査・選定から積算、工事管理までを一貫して手がけるベテラン技術者です。
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