EV充電が電力市場と繋がる時代へ需給調整市場への参入と充電インフラの収益化が機械式駐車場に与える影響

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【業界動向】EV充電が電力市場と繋がる時代へ

EV充電が「収益源」に変わる
需給調整市場への参入で充電インフラの価値が拡大

EV(電気自動車)の充電インフラが、単なる「電気を供給する設備」から電力市場に参加する収益資産へと進化しつつあります。2026年4月、MCリテールエナジー株式会社が複数拠点のEV充電器を束ねて需給調整市場に参入したことは、施設オーナーや管理会社にとっても注目すべき動きです。

需給調整市場とは、電力網の周波数制御や需給バランス調整のために必要な「調整力」を売買する市場です。再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、天候による発電量の変動を吸収する調整力の需要が急増しています。同社の取り組みでは、230基を超える充電器に接続されたEV車両の充電量を遠隔で制御し、複数拠点のリソースをひとつの調整力として市場に供出しています。

これは施設に設置されたEV充電器が、充電サービスの提供だけでなく電力系統の安定化にも貢献し、その対価を得られる可能性を示しています。将来的に充電器の設置コストを電力市場からの収入で回収できる仕組みが広がれば、施設オーナーにとってEV充電設備の導入判断が大きく変わるでしょう。

充電料金の低価格競争が加速
Terra Chargeが最安値キャンペーンを1年延長、施設への送客効果に期待

EV充電サービスの価格競争も激しさを増しています。Terra Charge株式会社は、2025年10月から実施している「業界最安値水準キャンペーン」の2027年3月末までの1年延長を発表しました。超急速充電(90kW・150kW)が通常価格の約半額となる44円/分で提供されるなど、利用者にとって大幅なコスト削減となります。

施設オーナーや管理会社にとって重要なのは、こうした低価格戦略が施設への集客効果をもたらす点です。道の駅、商業施設、ホテル、ゴルフ場などに設置された充電スポットでは、充電待ち時間に施設を利用する「ついで消費」が期待できます。充電インフラの有無が施設選びの基準になりつつある現状では、早期導入が競争優位につながります。

(参考:機械式駐車場のEV充電対応が加速〜2025年都内義務化で変わる駐車場運営〜

施設オーナーが今から備えるべきこと
充電設備の導入判断と電力契約の見直しポイント

EV充電インフラの導入を検討する施設オーナーや管理会社は、以下の点を押さえておく必要があります。

  1. 電力契約の見直し。充電器の導入により契約電力が増加し、基本料金が跳ね上がるケースがあります。デマンドコントロール機能付きの充電器を選定し、ピーク電力を抑制する設計が重要です。※電気料金は契約プランや電力会社により異なります。
  2. 将来の需給調整市場への参加可能性。現時点ではアグリゲーターを通じた参加が主流ですが、充電器の台数やEV利用率が増えれば、施設単位での参加も視野に入ります。導入時にスマート充電対応の機器を選んでおくことが、将来の選択肢を広げます。
  3. 補助金・助成制度の活用。経済産業省の「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」では充電設備の設置費用が補助対象となる場合があります。自治体独自の補助制度も増えており、詳細は所管機関にご確認ください。
  4. 利用者への周知と運用体制。充電器を設置しても、利用ルールや課金方法が不明確では稼働率が上がりません。アプリ連携やサイネージ表示など、利用者が迷わない運用設計を事前に整えておくことが大切です。
(参考:【2026年版】機械式駐車場の保守料金が上がり続ける理由と見直しのポイント

機械式駐車場とEV充電の両立課題
設備特性を踏まえた現実的な対応策とは

自走式駐車場や平面駐車場では充電器の設置が比較的容易ですが、機械式駐車場ではパレット上での充電に技術的な制約があります。パレットが移動する構造上、充電ケーブルの取り回しや安全確保が課題となり、現状では対応できる機種が限られています。

一方で、機械式駐車場メーカー各社もEV対応モデルの開発を進めており、充電コンセント付きパレットや非接触充電への対応など、技術的な選択肢は徐々に広がっています。既存設備への後付けは難しいケースが多いため、制御リニューアルや設備更新のタイミングでEV充電対応を組み込むのが現実的です。

EV充電が電力市場と繋がり、充電インフラが「コスト」から「収益源」へと変わる時代が近づいています。施設オーナーや管理会社は、設備更新計画にEV充電対応を盛り込み、将来の電力市場参加も視野に入れた中長期的な判断をおすすめします。マンション管理組合においても、修繕計画の見直し時にEV充電設備の検討を議題に加えておくとよいでしょう。

(参考:【大型設備向け】寿命や部品枯渇に伴う「制御リニューアル」の判断基準

法令・ガイドラインに関するご注意
本記事に記載の法令・条例・ガイドラインの内容は、執筆時点の公開情報に基づくものです。最新の規定や具体的な適用条件については、所管の行政機関に直接ご確認ください。

出典・参考資料

  • MCリテールエナジー株式会社「日本初、複数拠点のEV充電を活用して需給調整市場に参入」(2026年3月31日)
    prtimes.jp/main/html/rd/p/000000063.000046839.html
  • Terra Charge株式会社「EV充電料金『業界最安値水準キャンペーン』の1年延長を決定」(2026年3月30日)
    terra-charge.co.jp/press-release/20250929/
  • 国土交通省「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き(平成28年9月)
    mlit.go.jp/common/001145272.pdf
営業部 主任(業界リサーチ担当)
この記事の監修者 営業部 主任(業界リサーチ担当)

機械式駐車場業界15年。主要メーカー各社の経営動向・IR情報を常時ウォッチし、業界再編の流れを管理組合様にわかりやすくお伝えすることがモットー。メーカー系・独立系双方での勤務経験から、公平な目線でアドバイスいたします。

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