労働安全衛生法改正と機械式駐車場の保守管理化学物質の「自律的管理」移行が保守現場に与える影響

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【法改正】労働安全衛生法改正と機械式駐車場の保守管理

労働安全衛生法・作業環境測定法の改正とは
化学物質の「自律的管理」への転換が保守現場に与える影響

立体駐車場工業会(公益社団法人)は2026年3月24日、東京労働局による「労働安全衛生法及び作業環境測定法の改正について」の通知を会員企業に向けて公開しました。この改正は、従来の個別規制方式から、事業者による「自律的な化学物質管理」へと大きく転換するものです。2026年4月1日より完全施行となっており、対応が完了していない事業者は早急な体制整備が求められます。

従来の制度では、特定化学物質障害予防規則や有機溶剤中毒予防規則といった個別規則で物質ごとに詳細な措置が定められていました。改正後は、事業者自身がリスクアセスメントを実施し、その結果に基づいて適切な対策を講じる仕組みへと移行します。ラベル表示・SDS通知義務の対象物質は改正前の約674物質から約2,900物質に大幅拡大されており、機械式駐車場の保守・メンテナンス現場で日常的に使用される塗料・溶剤・潤滑剤なども広く対象となります。

立体駐車場工業会がこの通知を共有した背景には、機械式駐車場の保守作業が化学物質と密接に関わる業種であるという認識があります。施設オーナーや管理会社にとっても、保守業者の安全管理体制は委託先選定の重要な判断材料となります。

(参考:【2026年版】機械式駐車場の保守料金が上がり続ける理由と見直しのポイント

機械式駐車場の保守現場で対象となる作業
塗装・溶接・清掃・ピット内作業と化学物質リスク

機械式駐車場の保守・修繕では、以下のような場面で化学物質を取り扱います。今回の法改正により、これらの作業すべてでリスクアセスメントの実施と記録が求められます。

作業内容 主な化学物質 改正で変わるポイント
塗装・錆止め作業 有機溶剤、エポキシ樹脂、鉛系防錆塗料 SDS確認とリスクアセスメントが義務化。
溶接・切断 溶接ヒューム、マンガン化合物 個人ばく露測定による管理が原則に。
機械部品の洗浄 洗浄用シンナー、脱脂剤 代替物質の検討がリスク低減措置の一つに。
ピット内作業 密閉空間での揮発性物質 換気・保護具の選定を事業者が自律的に判断。

出典:厚生労働省「化学物質による労働災害防止のための新たな規制について」をもとにPD+作成

特に機械式駐車場のピット内作業は、換気が不十分になりやすい閉鎖的な空間で行われます。揮発性の溶剤を使用する塗装や洗浄作業では、作業者のばく露リスクが高まるため、自律的管理の考え方に基づく適切な対策が不可欠です。

(参考:【まとめ】機械式駐車場の塗装工事に関して

施設オーナー・管理会社が確認すべきこと
保守委託先の安全管理体制を見極めるチェックポイント

施設オーナーや管理会社は、直接の「化学物質管理者」を選任する立場にないケースがほとんどです。しかし、保守業者が法令を遵守しているかを確認する管理責任は存在します。労働災害が発生した場合、元請け・発注者としての管理監督責任を問われる可能性があるためです。

保守契約の更新時や新規業者選定時には、以下の点を確認することをおすすめします。

  1. 化学物質管理者および保護具着用管理責任者が選任されているか。
  2. 使用する塗料・溶剤のSDS(安全データシート)が整備・更新されているか。
  3. リスクアセスメントの実施記録が保管されており、閲覧可能か。
  4. 作業者に対する教育・訓練の実施状況が説明できるか。
  5. ピット内作業や塗装作業時の換気・保護具の運用基準が明文化されているか。

マンション管理組合においても、管理会社を通じて保守業者の安全管理体制を確認しておくことが望ましいです。法改正への対応状況は、業者の品質管理水準を測る一つの指標にもなります。

法改正を「安全な保守体制」の再点検に活かす
コンプライアンス対応と資産価値維持の両立

今回の法改正は、保守業者に直接的な対応を求めるものですが、施設オーナーにとっても保守体制を見直す好機です。安全管理水準の高い業者を選定することは、結果として設備の長寿命化と資産価値の維持につながります。

機械式駐車場の保守業界では、建設業全体と同様に担い手不足が深刻化しています。2026年2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比+1.3%(総務省統計局)と物価高騰が続く中、人件費の上昇に加え、主要資材(H形鋼+43%、生コン+69%、アルミ地金+109%、電線+141%:2021〜2026年比)の高騰が保守コストを押し上げています。こうした環境下でも、法令対応をおろそかにしない業者を選ぶことが、長期的なコスト最適化の鍵となります。

出典:一般社団法人日本建設業連合会「建設工事の資材価格高騰」2026年2月版

複数メーカーの機械式駐車場に対応できる独立系の専門業者であれば、複数の保守現場で培った安全管理のノウハウを持っていることが一般的です。メーカー系・独立系を問わず、法改正対応の具体的な取り組みを比較検討することで、安全性とコストの両面で最適な保守体制を構築できます。

(参考:機械式駐車場のメンテナンス業者にはどんな会社があるの?(メーカー系と独立系)

法令・ガイドラインに関するご注意
本記事に記載の法令・条例・ガイドラインの内容は、執筆時点の公開情報に基づくものです。最新の規定や具体的な適用条件については、所管の行政機関に直接ご確認ください。

出典・参考資料

  • 東京労働局「労働安全衛生法及び作業環境測定法の改正について」(2026年3月24日・立体駐車場工業会公開)
    ritchu.or.jp(PDF)
  • 厚生労働省「化学物質による労働災害防止のための新たな規制について」
    mhlw.go.jp
  • 一般社団法人日本建設業連合会「建設工事の資材価格高騰」2026年2月版
    nikkenren.com
営業部 主任(業界リサーチ担当)
この記事の監修者 営業部 主任(業界リサーチ担当)

機械式駐車場業界15年。主要メーカー各社の経営動向・IR情報を常時ウォッチし、業界再編の流れを管理組合様にわかりやすくお伝えすることがモットー。メーカー系・独立系双方での勤務経験から、公平な目線でアドバイスいたします。

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