機械式駐車場でのEV充電が現実に|テラチャージとIHI扶桑エンジニアリングが連携開始

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【ニュース】機械式駐車場でのEV充電が現実に|テラチャージとIHI扶桑エンジニアリングが連携開始

機械式駐車場でのEV充電が現実にテラチャージとIHI扶桑エンジニアリングが
新築集合住宅向けに同時提供を開始

EV充電サービスを展開するTerra Charge株式会社と、二・多段式駐車装置の大手である株式会社IHI扶桑エンジニアリングが、新築集合住宅向けに機械式駐車装置とEV充電器の同時提供を開始しました。これまで技術的に困難とされてきた機械式駐車場へのEV充電導入に、具体的な解決策が示された形です。施設オーナーや管理会社にとっては、新築物件の駐車場仕様を検討する際にEV充電を標準装備とする選択肢が加わったことになります。

連携の概要と技術的アプローチ
幅広パレットと地上一段への設置で制約を緩和

今回の連携では、IHI扶桑エンジニアリングの機械式駐車装置にTerra ChargeのEV充電器を組み合わせ、新築集合住宅への同時納入を実現しています。機械式駐車場でのEV充電が難しいとされてきた最大の理由は、パレットの昇降動作にあります。充電ケーブルがパレットからはみ出すと昇降が緊急停止するリスクがあり、車両充電口の位置や寸法の制約も大きな課題でした。

本連携では、幅1,950mm以上の広いパレットを採用し、充電ケーブルのはみ出しリスクが少ない地上一段にEV充電器を設置することで、これらの制約を緩和しています。地上一段であればパレットの昇降動作を伴わないため、ケーブルの取り回しや充電口の位置に関する制約が大幅に軽減されます。IHI扶桑エンジニアリングは年間10,000パレット超の納入実績を持ち、IHIグループとして製品開発から品質管理、メンテナンスまでの一貫体制を構築しています。

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なぜ今、機械式駐車場のEV充電が急務なのか
集合住宅居住者の8割超が充電環境の不足を実感

機械式駐車場へのEV充電導入が注目される背景には、集合住宅における充電インフラの深刻な不足があります。日産自動車が2023年に公表したプレスリリース「電気自動車の充電についての意識調査」によると、集合住宅に住むEV購入検討者の75.5%が「自宅にEV充電設備がない」と回答しており、「わからない」を含めると82.3%にのぼります。さらに、81.8%が「自宅に充電環境がないことは不便」と感じているという結果も出ています。

経済産業省は「充電インフラ整備促進に向けた指針」(2023年10月)において、2030年までにEV充電器の設置目標を30万口と掲げており、そのうちマンションなど自宅での基礎充電を10万〜15万口としています。現在の設置数が約3万基であることを考えると、今後5年間で10倍近い拡充が求められている計算です。集合住宅の駐車場の多くが機械式である都市部においては、機械式駐車場でのEV充電対応が避けて通れない課題となっています。

一方で、既存の機械式駐車場へのEV充電器の後付けは、設備の構造的制約から容易ではありません。今回のように新築時に同時導入する方式は、後付けに伴う追加工事や設計変更のコストを抑えられる点で合理的なアプローチといえます。

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施設オーナー・管理会社が押さえるべきポイント
新築計画と既存設備、それぞれの検討事項

今回の連携は新築集合住宅が対象ですが、施設オーナーや管理会社が検討すべき事項は新築・既存を問わず存在します。新築物件を計画中の場合は、駐車場の仕様選定段階でEV充電の同時導入を検討する価値があります。入居者の利便性向上に加え、物件の資産価値や競争力の面でも有利に働く可能性があります。

既存の機械式駐車場を保有する場合は、現時点で後付け対応が可能かどうか、管理会社を通じてメーカーや保守業者に確認することが第一歩です。地上一段のみへの設置であれば比較的制約が少ないとされていますが、設備の仕様や築年数によって対応可否は異なります。また、EV充電器の設置には電気容量の確保や受電設備の増強が必要になるケースもあるため、電気設備の現状確認も併せて実施することをおすすめします。

EV充電の導入を検討する際には、充電対象となるEV自体の車両特性にも注意が必要です。EVはバッテリーを搭載するぶん同クラスのガソリン車より重くなる傾向があり、機械式駐車場の重量制限を超えてしまうケースも想定されます。充電設備の導入と合わせて、設備の収容基準(サイズ・重量制限)が現在の車両動向に適合しているかも確認しておくと安心です。立体駐車場工業会は2026年1月に自動車の平均車重に関する技術通達を発出しており、設備の耐荷重と現代車両のミスマッチが業界全体の課題となっています。

(参考:立体駐車場工業会が平均車重の新指針 機械式駐車場オーナーが知るべきこと

出典・参考資料

吉岡 慎太郎(営業部主任)
この記事の監修者 吉岡 慎太郎営業部 主任(業界リサーチ担当)|宅地建物取引士

宅地建物取引士。新設マンション施工管理からキャリアをスタートし、装置入替え・保守点検・管理組合営業を経験。現在は大手商業施設を中心にタワー式駐車場の保守管理に従事。

※本記事で紹介している内容は一般的な事例であり、実際の提供サービスや施工内容は、お客様との打ち合わせ、ご予算、設置環境などの諸条件により個別に決定されます。パーキングドクター株式会社の標準サービスと異なる場合がありますので、詳細は個別にお問い合わせください。