結論から言えば、一度でも浸水した機械式駐車場は、水が引いただけで再稼働してはいけません。利用を止め、立ち入りを制限し、保守点検事業者による確認を受けることが先です。
2026年8月の千葉豪雨では、マンション駐車場や立体駐車場の地下が浸水した事例も報じられました。被災直後にまず止めること、再稼働前に確認すること、次の豪雨に向けて残す記録を順番に確認していきましょう。
千葉豪雨で起きた駐車場・車両被害被害の有無は立地や設備によって分かれた
内閣府の2026年8月27日付被害報告では、千葉県の住家被害は4,597棟、停電は最大約46,980件と整理されています。道路上の被災車両の移動には、レッカー車や車両移動用ドーリーが投入されました。
日本経済新聞は、県内の被災車両が1万台を超える可能性があり、千葉市中心部ではマンション駐車場や立体駐車場の地下が浸水した事例もあったと報じています。車両だけでなく、駐車設備の復旧判断も必要になる被害です。
一方、内閣府の同報告では、国が直接管理する地下駐車場について、雨量基準超過による閉鎖も被害もなかったと記録されています。すべての地下・機械式駐車場が同じ被害を受けたわけではなく、立地、流入口、排水能力、設備配置によって状況は異なります。
千葉だけではありません。2026年8月27日からの大雨では、富山県が高岡市、氷見市、小矢部市、射水市に災害救助法を適用しました。東京都の城北部にある板橋区でも、8月22日の集中豪雨を受け、区が罹災証明書の発行や浸水家屋の消毒などを案内しています。
こうした大雨が2026年だけの特徴なのか、来年以降も同じように続くのかは、現時点では断定できません。ただし、複数の地域で被害が起きている以上、今年だけの例外と考えず、利用停止や車両退避の基準を見直しておく必要があります。
浸水直後は装置を動かさない停止・立入制限・連絡を先に行う
浸水を確認したら、最初に行うのは復旧操作ではなく人の安全確保と装置の使用停止です。公益社団法人立体駐車場工業会も、一度でも浸水した駐車装置はそのまま使用せず、必ず保守員の点検を受けるよう案内しています。
- 装置の利用を止め、利用者が操作できないよう周知する。
- ピットや装置内へ立ち入らず、安全な位置から浸水範囲を確認する。
- 水位、発見時刻、警報表示、泥や流入物、格納車両を写真とメモで記録する。
- 施設オーナー、管理会社、保守点検事業者、該当する利用者へ順番に連絡する。
電源の遮断方法が分からない場合や、操作盤周辺まで濡れている場合は、管理者だけで機器に触れないでください。発煙、異臭、人身事故などがある場合は消防へ連絡し、その後の設備確認は保守点検事業者へ引き継ぎましょう。
事故発生時の連絡順序や現場保存は、(参考:機械式駐車場で事故発生時の正しい対処法)が参考になります。
再稼働前に確認する4項目水が引いたことと安全確認は別に考える
再稼働の判断は、雨が止まったかどうかだけでは決められません。国土交通省関東地方整備局も、台風に伴い閉鎖した地下駐車場について、大雨のおそれがなくなり、安全確認が完了した後に閉鎖を解除しています。
この事例は国管理の自走式地下駐車場であり、民間の機械式駐車場へそのまま適用される基準ではありません。ただし、外部状況の改善と設備の安全確認を分けるという考え方は、再稼働手順を決めるうえで参考になります。
| 確認項目 | 施設側が伝える情報 | 保守点検事業者に確認する内容 |
|---|---|---|
| 浸水範囲 | 最高水位、浸水時間、泥や流入物の有無 | ピット、モーター、センサー、配線、制御盤への到達状況 |
| 電気系統 | 停電、警報表示、異臭や発煙の有無 | 絶縁状態、漏電や短絡の有無、交換が必要な電装部品 |
| 機械部分 | 異音、変形、車両やパレットの位置 | チェーン、軸受、パレット、駆動部の洗浄・給油・交換要否 |
| 排水設備 | 排水速度、ポンプ作動、再流入の有無 | 排水ポンプ、フロート、センサー、排水経路の機能 |
出典:公益社団法人立体駐車場工業会の注意喚起を基にParkingDoctor+編集部作成
駐車装置を上下させる電動モーターは、浸水しても十分に乾燥させ、絶縁状態を確認した後に再使用できる場合があります。一方、水分が残ったまま通電・試運転すると、絶縁不良を起こしてそのまま故障する事例もあります。見た目の乾燥だけで判断せず、保守点検事業者による確認を受けましょう。
点検後は、再稼働できる範囲、停止を続ける範囲、必要な修理、利用者への制限事項を文書で確認しましょう。浸水したから一律に装置全体を交換するのでも、水が引いたから全面再開するのでもなく、機種と被害範囲に応じた判断が必要です。
記録を残して次の豪雨に備える記録と事前の退避判断を次の豪雨につなげる
復旧後に残すべきものは、修理の請求書だけではありません。発見時刻、浸水水位、利用停止時刻、連絡先、点検結果、交換部品、再稼働日時を一つの記録にまとめると、次の豪雨時に迷わず判断できます。
災害級の大雨では、保守点検事業者が緊急出動できない場合がほとんどです。地震などの災害でも同様で、現地での点検や復旧は、周囲の安全が確認できてからの事後対応にならざるを得ません。
発災時に保守点検事業者がすぐ到着することを前提にせず、施設側でできる初動を事前に決めておきましょう。装置の停止方法、メーカーの取扱説明書、連絡網、車両退避基準、止水板・土のう、排水ポンプを平時に確認しておけば、発災後にその場ですぐの対応を求めずに済みます。
国土交通省の直轄地下駐車場向けガイドラインでは、警戒レベル3相当で監視強化・閉鎖準備、警戒レベル4相当で原則閉鎖する考え方が示されています。また、止水板、浸水センサー、排水ポンプ、電気設備などの点検計画と結果を明確にする方針も示されました。
この基準も国管理の地下駐車場向けですが、閉鎖の判断時期を先に決めておく考え方は民間施設でも使えます。ハザードマップ、過去の浸水、装置仕様、保守点検事業者の助言を基に、利用停止と車両退避の基準を事前に決めておきましょう。
警戒レベル4相当で閉鎖するなら、車両をどうするかはその前に決めておく必要があります。基本は安全な場所への事前退避です。
低層式では、浸水対策としてインターロックを解除し、下段の車両を上昇させられる機種があります。インターロックは安全のための連動機構で、解除の可否と操作手順は機種ごとに異なります。必ずメーカーの取扱説明書で確認し、記載がない場合は保守点検事業者へ確認してください。
敷地内や周辺に退避先がない場合は、土のうや止水板で流入口を塞ぎ、排水ポンプを連続運転するなど、浸水を遅らせる対策を組み合わせましょう。ただし、流入量が排水能力を上回れば浸水を防ぎ切れません。危険が迫ってからの土のう設置や車両移動は避け、人の安全を優先します。
大雨前の排水設備、水害対策運転、利用者周知については、(参考:大雨時の機械式駐車場 浸水リスクと対策)をご覧ください。今回の記録を次回の判断基準に反映しておくと、次の豪雨で迷わずに済みます。
設備側の対策だけで防ぎ切れない場合に備え、車両保険で台風・洪水による水没が補償対象かを事前に確認しておきましょう。日本損害保険協会も、車両保険を付けていても契約タイプによって保険金が支払われない場合があるとして、保険会社や代理店への確認を案内しています。
車両の被災証明や管理者側の責任は、契約や被害状況によって結論が変わります。水位や発見時刻などを記録し、被災証明は自治体、補償範囲は保険会社、費用負担は管理主体へそれぞれ確認しましょう。
出典・参考資料
- 内閣府「令和8年8月千葉豪雨による被害状況等について」(2026年8月27日10:00現在)
bousai.go.jp/updates/r8chiba_ooame/ - 日本経済新聞「千葉豪雨、路上の車両撤去ほぼ完了 被災は『1万台超』」(2026年8月26日)
nikkei.com/article/DGXZQOUD267MZ0W6A820C2000000/ - 富山県「令和8年8月27日からの大雨に伴う災害の災害救助法の適用について」(2026年8月27日)
pref.toyama.jp/1900/bousaianzen/bousai/0826bousai.html - 板橋区「8月22日の集中豪雨により被災された方へ」(2026年8月26日更新)
city.itabashi.tokyo.jp/bousai/bousai/1065820.html - 公益社団法人立体駐車場工業会「機械式駐車場の所有者・管理者・操作されるみなさまへ」
ritchu.or.jp/common/pdf/pamp101b.pdf - 国土交通省「国管理の地下駐車場に関する浸水対策ガイドライン(直轄地下駐車場)」(2026年3月6日)
mlit.go.jp/report/press/road01_hh_002059.html - 国土交通省関東地方整備局横浜国道事務所「台風第6号の影響に伴う羽衣・伊勢佐木地下駐車場閉鎖(終報)」(2026年6月3日)
ktr.mlit.go.jp/kisha/kisha_03413.pdf - 一般社団法人日本損害保険協会「風水雪災等による損害を補償する損害保険」(2025年10月6日更新)
sonpo.or.jp/insurance/shizen/
第二種電気工事士・消防設備点検資格者。機械式駐車場の保守点検・緊急故障対応を25年にわたり現場で経験。部品の調査・選定から積算、工事管理までを一貫して手がけるベテラン技術者です。
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