各国で電気自動車普及のための政策が打ち出され、実際に普及率が上がってきています。それに伴い、電気自動車用の充電設備もインフラ整備の一環で目にする機会も増えてきました。
今回の記事では、電気自動車の普及はどの程度進んでいるのか、今後どのように進んでいくのか。機械式駐車場における課題を解説しています。充電設備を導入するにはコストも掛かるため慎重な検討が必要です。
充電設備を導入するかどうかは、電気自動車の抱える課題などを理解した上で導入するかを決めるべきでしょう。充電設備の導入をどのようにすればよいか悩んでいる方は参考にしてみてください。
各国の電気自動車の動向
電気自動車の動向が、各国でどのようになっているのかをまずは理解することが必要です。次の項目に沿って解説します。
- 主要国のEV政策や普及状況
- トランプ前大統領のEV優遇廃止
- ハーツレンタカーのEVからエンジン車への切り替え
- テスラのEV部門での大規模なリストラ
それぞれの内容を詳しくみていきましょう。
主要国のEV政策や普及状況
主要国のEV政策や普及状況をまずはみてみましょう。米国では、2023年のEV普及率は7.6%となり、2021年の3.2%から大きく増加してきました。
米国では、バイデン政権が打ち出した最大7500ドルの税額控除がEV普及に大きく貢献しています。ただし、州ごとに異なる補助政策があるため、地域ごとの普及率には差が生じているのが現状です。また、2023年は成長の勢いがやや鈍化しています。
中国では、2023年時点でEV普及率が38%に達しており、EV車購入に対する補助金や税額免除などの政府の支援策が普及を後押ししてきました。
欧州では、EV推進に対する注力度が高く、2023年の普及率は21%に達しています。地域ごとに普及率に差があることが特徴で、特に北欧諸国では普及が進んでおり、ノルウェーではEVの普及率が90%近くに達しており、世界最高水準です。
出典:iea50/Global EV Data Explorer
トランプ前大統領のEV優遇廃止
ドナルド・トランプ前大統領は、次期大統領選挙の有力候補として、バイデン政権が進めているEV普及推進のための補助金政策を強く批判しています。トランプ氏は、EV奨励が特定の業界の雇用を奪う要因となるとし、EV補助金政策が不公平であると主張してきました。
トランプ氏が次期大統領に当選した場合、現在のEV普及を支えている補助金政策が打ち切られる可能性が高いと示唆されています。
ハーツレンタカーのEVからエンジン車への切り替え
米国のレンタカー大手ハーツ・グローバル・ホールディングスは、2023年12月に保有しているEV車の売却を開始したことを届け出で示しました。ハーツレンタカーによる売却は、2024年を通して継続される予定です。
ハーツの最高経営責任者であるスティーブン・シャー氏は、全車両の11%に該当するEV車の保有台数を縮小する方針を示しており、エンジン車へのシフトを進めていることが分かります。
出典:Bloomberg/レンタカーのハーツ、電気自動車2万台を売却へ-ガソリン車に再投資
テスラのEV部門での大規模なリストラ
テスラは、2024年に全体の10%以上に相当する大規模な人員削減を行うことを公表しました。リストラの決定は、足もとの販売台数減少と2024年以降の厳しい見通しを受けたもので、特に2024年第一四半期の販売台数は前年同期比でマイナスに転じているのが現状です。
販売台数の減少傾向は、テスラの工場稼働率低下につながり、工場の従業員や営業スタッフに対する余剰人員のリストラが進められることが予測されています。テスラの従業員数は約14万人に達しており、今回のリストラで1.5万人以上が影響を受ける可能性があるのが現状です。
出典:Yahoo!Japan/イケイケだったテスラに何があった?イーロンマスクが1.5万人規模のリストラを発表!
国内の機械式駐車場におけるEV充電設備設置の現状と課題
国内の機械式駐車場では、EV充電設備の設置に関していくつかの課題があります。充電器を設置する際には、電気の契約を見直さなければなりません。分電盤に空きスペースがあるか、契約しているアンペア数が十分かどうかなどの確認が必要です。
ブレーカーの増設が必要な場合、基本料金が上がる可能性があるため、コスト面にも注意が必要となるでしょう。一方で、東京都では2025年から新築の集合住宅に対して一定の充電設備の設置が義務付けられる予定のため、充電設備設置は今後広まっていく可能性もあります。
機械式駐車場としてEV充電設備を設置すべきかどうかは、国内の普及状況だけではなく、EVが抱える課題を理解した上で慎重に進めなければなりません。
EVとして、どのような課題が浮き彫りになっているかをみていきましょう。
【夏場】電気不足の問題
トヨタ自動車の豊田章男会長は、日本自動車工業会の会見で、国内の全車両がEVに置き換わった場合、夏の電力使用ピーク時に電力不足に陥る懸念を示唆しました。
電力不足を解決するためには、原子力発電所で10基、または火力発電所で20基の増設が必要と指摘しています。
しかし、すべての車両がEVに置き換わるまでには相当な年数が掛かるため、その間に対応策を講じる時間は十分にあるとする意見もあります。夏場の電力不足に対する指摘は、EVの普及が進む中で、電力供給の安定性を確保するための重要な課題となっており、エネルギー政策やインフラ整備の見直しが求められていくでしょう。
出典:東洋経済ONLINE/課題山積でも「日本でEV普及が急加速できる」根拠
東京都のソーラーパネル設置義務とは
東京都では、2025年4月から新築住宅などへの太陽光発電設備の設置が義務付けられる新制度が導入されます。設置義務の新制度は、東京都が掲げる2030年までに温室効果ガスを50%削減する構想の一環として策定されました。
現時点では、制度の影響を考慮し、大手ハウスメーカーが関わる新築住宅に限定されているほか、住宅の面積などによっては設置が免除されるケースもあります。しかし、2030年までの温室効果ガス削減構想を加味すると、今後は義務化がさらに拡大され、太陽光発電設備の普及が一層促進されることが予想されるでしょう。
EVの減価償却効率の問題
EVは、ガソリン車に比べて燃料費が抑えられる一方で、減価償却の効率が悪い課題があります。要因となっているのが、EVの市場価格が安定していないため、将来的な普及率や供給量の変動によって市場価格が急落する可能性があるためです。
実際に、直近でテスラ車の市場価格が急落したことで、米レンタカー大手ハーツは減価償却で約2億4500万ドル(約355億円)の損失を見込んでおり、1台当たり約177万円のコストが掛かるとされています。
さらに、EVは修理に掛かるコストや時間がガソリン車よりも多い点も懸念材料です。EVの減価償却効率の悪さが、EV車両を多く抱える企業にとっての大きな経済的リスクとなっています。
出典:CNN/米レンタカー大手ハーツ、EV2万台売却へ 代わりにガソリン車購入
EVの寒冷地では性能が悪くなる?
EVは寒冷地での性能低下も課題です。氷点下20度以下の厳寒地シカゴでは厳しい寒さの中でテスラ車が充電速度の低下や充電機能の不具合に見舞われ、充電スタンド前で長蛇の列が発生しました。
低温環境がバッテリー内部の化学反応を抑制し、充電や放電などの物理的プロセスを遅らせることが原因とされています。さらに、寒冷地でのEV運用では、ヒーターの使用による航続可能距離の短縮も課題です。
寒冷地では車内を暖めるためにヒーターを使用する必要がありますが、ヒーターはバッテリーから直接電力を消費します。そのため、ヒーターを使用するとバッテリーの消耗が早まり、結果として航続距離が短くなることが避けられません。
出典:ForbesJapan/「EVの航続距離」は氷点下の気温で大幅に減少その原因と対策
EV充電設備のコストが掛かる
充電設備には普通充電器と急速充電器の2種類があります。普通充電器の本体価格は70万円程度で、急速充電器は約230万円とかなり高額です。設置費用は分電盤からの距離や敷地の広さなどの条件によって異なるため、実際の設置に関する総合的なコストを把握するには見積もりを依頼するとよいでしょう。
また、充電設備の運用に掛かるランニングコストも考慮しなければなりません。月に100回から200回程度の利用が見込まれる場合、維持費用は約40万円から100万円程度に達します。整備費用は含まれてはいないため、さらにコストが掛かる可能性があるでしょう。
ハイブリッド車(HV)の可能性
ハイブリッド車の可能性に再び注目が集まっています。ハイブリッド車のメリットと現在の普及状況をみてみましょう。HVとEVどちらが今後主導権を握っていくのかは、機械式駐車場として充電設備を設置するタイミングにもつながる重要な要素です。
ハイブリッド車(HV)のメリット
ハイブリッド車(HV)のメリットは、ガソリン車と電気自動車(EV)の双方の利点を兼ね備えている点です。HVには主に3つの方式があります。
1つ目は、エンジンを発電専用に使用し、電気で走行を行う方式です。2つ目として、エンジンを走行に使用し、モーターがサポートとして機能する方式もあります。3つ目は、エンジンとモーターを最適に使い分け、EVとしての走行やガソリン車としての走行を適宜選択する方式です。
HVは状況に応じてエネルギー効率の最適化が可能です。結果として、ガソリン車よりも低燃費を実現し、EVのような充電が不要となる点がHV車のメリットとして挙げられます。
ハイブリッド車(HV)の普及状況
2023年では、主要国でのEV販売台数の伸び率はハイブリッド車(HV)を下回る結果となりました。HVがEVを上回る結果は、充電インフラの不足などEVに関連するさまざまな課題が顕在化したことが影響しているでしょう。
EVの課題が浮き彫りになったことで、使い勝手の良さや既存のインフラを利用できる利便性から、HV車が再び選ばれる傾向が強まっています。
また、米アップルがEV車の開発を中止したり、独フォルクスワーゲンがEV生産体制を縮小したりするなど、各国で戦略の見直しが進んでいることも、HV車の普及が再評価される要因となっているでしょう。
まとめ
今回の記事では、電気自動車の普及は進んでいるのかどうかを解説しました。機械式駐車場として充電設備をどのタイミングで進めるべきかに関しては、EVの普及が停滞していてHVが再度注目されている現状から、結論として設置タイミングには慎重にならなければなりません。主要国では、EV普及に関する政策として補助金や税額免除などが掲げられて普及率が増加傾向にありました。
しかし、近年のEVでの課題浮き彫りによりHVが再び注目されてきている現状もあります。機械式駐車場として設備設置のタイミングを慎重に考慮する必要があるでしょう。また、充電設備を導入する場合でも、ブレーカー増設が必要かどうかなど確認すべきポイントはいくつかあります。
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