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こんにちは。 パーキングドクタープラス編集部です。
マンションでよく起きるマナートラブルといえば、「騒音問題」の他に「迷惑駐車(無断駐車)問題」があります。
ほとんどのマンションには駐車場があるので、これはいつ、どこでも起こりうる問題です。
しかし、マンションを管理する理事たちが、マンション駐車場で起こりやすいトラブルに対して、有効な対策方法を知っておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
今回は、迷惑駐車トラブルをはじめ、駐車場でよくあるトラブルや困りごとについての解決法をご紹介いたします。悩んでいる方はぜひ最後までご覧になってみてくださいね。
トラブル①迷惑駐車が多くて困っている
マンション駐車場トラブルといえば、何といっても迷惑駐車(無断駐車)でしょう。
国土交通省が発表した「平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状」の中で、マンション居住者間のマナートラブルについての具体的な内容が記載されています。
居住者間のマナートラブルで最も多かったのが、「生活音トラブル(38.0%)」で、二番目に多かったのが「違法駐車・違法駐輪(28.1%)」でした。
(国土交通省|平成30年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状より引用)
迷惑駐車を行っている人は、主にマンションの区分所有者とその関係者、マンションには関係のない部外者と様々です。
迷惑駐車が行われている主な場所は、マンション駐車場の空いているスペースや専用駐車スペース、敷地内や周辺の道路などです。
どちらにせよ、マンション付近での迷惑駐車は非常に迷惑ですし、それを放っておくことで様々な悪影響が懸念されます。
例えば、迷惑駐車によってこんなことが起きやすくなります。
・車の出し入れが不自由になり、事故を起こしやすくなる
・消防車や救急車など緊急事態のときの妨げになる
・定期的に訪れる各種設備点検やゴミ収集車の邪魔になる
・モラルが低下しやすい
特に気になるのが、4つ目の「モラルが低下しやすい」ということでしょう。
迷惑駐車を放っておくと「あのマンションは管理がずさんだ」とか、「無断駐車していても構わないマンションだ」と周りから認識されてしまいます。
そうなると、よそから来た人が無断駐車をしたり、また区分所有者であっても常識を守るという意識が低くなり、自分の駐車スペースではない場所に停めるようになったり、知り合いが来た時に無断で停めさせてしまったりと、迷惑駐車を平気で行う人がどんどん増えてしまうこともありえます。
では、迷惑駐車を減らすために、どのような対策を行えば良いのでしょうか。
迷惑駐車への解決方法
迷惑駐車の解決方法として、まず迷惑駐車を見つけたら、車のワイパーに「警告票」をはさみ、違反であることを通知します。
警告文には、「あなたの自動車は当マンションの管理規約に反した無断駐車をしています。直ちに移動してください」などの文章が考えられます。
それでも一向に解決しないなら、車体の写真を撮る、ナンバーを記録するなどして、マンション内の掲示板に貼ってマンション住民の中で心当たりがないかを調べます。
掲示板に貼る場合は、感情を逆なですることがないよう、文言や掲示する箇所に気を配りながら、慎重に行うことが大事です。
<マンション区分所有者であるなら>
もし、マンション区分所有者であれば、何らかの反応があるはずです。
誰が無断駐車をしていたか分かった時点で、理事会として今後このようなことがないよう申し入れをします。
感情的になることや、言った言わないといった水掛け論を避けるためにも複数人で訪問し、あくまで冷静に対応することをお勧めします。
<マンション部外者であるなら>
もし、マンション部外者であるなら、毅然とした態度で対応する必要があります。
「土地の不法占拠」ということで最寄りの運輸支局(または自動車検査登録事務所)で「現在登録事項等証明書」を取得すれば、車の所有者の氏名や住所を知ることができます。
度重なる違反の場合は所有者を確認したうえで、内容証明郵便等で警告することが有効です。
どんな人が無断駐車を行っているか分からず、管理組合だけで対処するのに不安があるならば、管理会社や警察のサポートに頼るという方法もあります。
(大阪市マンション管理支援機構|マンション管理Q&Aより引用)
迷惑駐車を未然に防ぐ方法
迷惑駐車を未然に防ぐ方法としては、カラーコーンを置くなどして、無断で駐車しづらい環境を作るのもお勧めです。ゼブラゾーンを路面に標示するというのも良い案ですね。
他にも「駐車禁止」と目立った看板を立てるだけでも効果ありますし、監視カメラや夜間照明を設置するなども有効です。
管理組合の理事が定期的にパトロールを行い、迷惑駐車は許さないという強い意思表示をすることも効果的です。
トラブル②駐車利用者の希望者が多く駐車場が足りなくなった
高齢化や都市開発の影響で車の運転をする人が少ない傾向にありますが、マンションによっては駐車場利用者の希望が多く、現在ある駐車場では足りないというところもあるようです。
「1戸に1台のみ」という車の台数制限を設けているマンションも多いようですが、家族構成によっては、1戸あたり2台以上の車を所有している世帯もいるからです。
駐車場利用を希望する人数に対して、駐車場が足りない場合には、以下の対策を検討してみてはいかがでしょうか?
近隣の駐車場を利用する
まず、近隣の駐車場を借りるという案です。
現在は、駐車場使用の希望者が多い状態かも知れません。しかし、この先ずっとこの状態が続くとは限りませんよね。10年20年と時が経てば状況が変わり、マンション駐車場の利用者が減っていく可能性も考えられます。
新たに駐車場を整備するのには、土地代、管理維持費等、多額の費用が必要となってきます。先々のことを考えて、新たに駐車場を設置せずに、近隣の駐車場を利用してもらうという方法もあるでしょう。
新たに駐車場を増設する
続いて、マンション内の敷地などを改築して駐車場にする案です。
敷地内に余った土地がなければ、近隣の土地を購入し、そこを駐車場にするというのも1つの方法ですね。
しかし、都心の場合は土地の値段が非常に高く、また空地も少ないですので、新たにに駐車場を設けるというのは簡単なことではありません。
メンテナンス費や修繕費などはかかりますが、限られた土地を有効利用できる機械式駐車場を設置するというのも有効です。
なお新たに駐車場を設置する場合は、共用部分の変更になるので、総会の決議を経て決定となります。組合員と議決権の各4分の3以上で成立される特別決議が必要です。
トラブル③駐車場の車が傷つけられた時、誰が補償するのか?
マンション駐車場で区分所有者の車が傷つけられてしまった場合、「管理組合として補償するべきか?」「管理組合はどこまで責任を持つべきなのか?」という疑問を持たれている方も多いかと思います。
マンション敷地内の駐車場で車体が傷ついてしまった場合、誰が補償するのかは、車体が傷ついた原因によって違います。
マンション管理組合が補償すべき事例
マンションの建物の損壊、外壁の落下や設備の不備が原因で車体に傷がついたのであれば、管理組合として賠償しなければなりません。
共用部分の施設賠償責任保険で損害を補償することになるでしょう。
※各マンションによって保険加入の有無や契約内容は異なります。保険に加入している場合は、契約している保険会社に契約内容を確認してみましょう。
マンション管理組合の補償が必要ない事例
他の車にぶつけられた場合は、一般の自動車事故の場合と同じ扱いになります。
ぶつけた相手方が分かっていれば、当事者同士の話し合いによって解決するのが原則です。
加害者が分からない場合、管理組合として出来ることは、自分から名乗りでてもらうように掲示板に貼り出すなどの対策を行うと良いでしょう。
もし、加害者が名乗り出ない場合は、被害者自身の自動車保険(車両保険)で修理費を支払うことになります。
問題なのは子供のいたずらや、誰かの仕業による車両損傷の場合です。この場合、管理組合が賠償責任等を負うかどうかの問題ですが、駐車場所を提供しているだけで車両を保管しているとは言えないとの理由から、組合は原則として責任を負わないと考えます。
ただし、マンション総合保険に個人賠償特約等が付加されていれば、加害者が特定されれば適用になるケースもありますので、保険会社に確認するのが良いでしょう。
管理組合としてはトラブルを避けるためにも、マンション駐車場の使用細則や契約書に、管理組合が責任を負わない旨の規定を設けておくなどの必要性があります。
〈駐車場の使用細則や契約書に規定しておく〉
「駐車場使用料を払っているのだから、管理会社や組合が補償すべきではないか」と管理会社や管理組合の責任にしようとする人がいるかもしれません。
しかし、駐車場所を提供しているだけで車両を保管しているわけではありません。
ですから、原則として、マンションの設備の不備が原因で車体に傷がついた場合でない限り、管理組合が責任を負う必要はありません。
管理組合として、このようなマンション駐車場のトラブルを避けるためにも、「車両の保管については、管理組合が責任を負わない」という考えを使用細則や駐車場使用契約書に規定しておくと良いでしょう。
また、管理組合にも個人(マンション居住者)にも賠償責任が問えないようなトラブルの場合、残念ながら適用される保険はありません。
所有者自身が自動車保険(車両保険)に加入しておくことの必要性を、契約時に説明することも1つの方法かと思います。
(参考:一般社団法人|マンション管理業協会)
トラブル④駐車場で盗難が発生した場合はどうしたらいい?
もしマンション駐車場において車の盗難や車上荒らしが発生した場合、このまま放置しておくと、いつまた被害にあうか分かりませんし、マンション住民の間で不安が広がり、「安心できないマンション」ということで退去していく住民も出てくるかもしれません。
マンション駐車場での車の窃盗や車上荒らしなどが二度と起こらないように、管理組合として迅速に対応しましょう。
区分所有者に注意を呼び掛ける
車の盗難や車上荒らしに遭わないためには、マンション住民全体が防犯意識を高めていくことが重要です。
・車を離れるときは、窓を閉め、キーを抜いてドアロックすること
・貴重品を車内に置きっぱなしにしない
これらの注意事項を、管理組合からマンションの区分所有者に呼びかけてください。
日頃から、挨拶などの声かけをして、区分所有者同士のコミュニケーションを取ることも効果的です。
盗難防止装置を設置する
イモビライザー、タイヤロック、ハンドルロック、警報装置などの盗難防止装置を設置するのも非常に有効です。
車の盗難防止装置を区分所有者につけてもらうことで、マンション駐車場の車の盗難や車上荒らしを未然に防ぐことができます。
※イモビライザーとは、電子式移動ロック装置のこと。エンジンキーのIDコードと車両本体のIDコードが一致しない不正に作られたキー(または直結)では、エンジンがかからないシステムとなっています。車の盗難防止の機能が高く、効果的な防犯機器として期待できます。
防犯を強化した駐車場づくり
管理組合として、被害に遭いにくい駐車場づくりに取り組むのも良いでしょう。
例えば、照明器具を設置し、夜間でも明るさと見通しを確保することや、駐車場にロボットゲートを設置するのも不審者の侵入を防ぐのに有効です。
※ロボットゲートとは、駐車場の出入口に設置される自動式のゲートのことで、チェーンや棒で閉鎖するものやフェンスが自動的に開け閉めできるものなどがあります。
プライバシーに関するため反対意見もあるかと思いますが、防犯カメラの導入も犯罪の抑止力は大きいです。
防犯カメラやロボットゲートを扱う会社は、防犯コンサルタント会社を兼ねていることが多いです。
マンションの位置や規模、形状、管理体制に合った防犯対策ノウハウを提供してもらうことができます。
駐車場全域をカバーできるようなカメラを設置するのが現実的に難しいなら、ダミーのカメラを設置したり、「防犯カメラ作動中」といった掲示でも防犯対策として有効です。
トラブル⑤駐車場の空きスペースが目立ってきている
近年「マンション住民の高齢化」や「若者の車離れ」、さらに機械式駐車場があるマンションでは「子育て世代などの車両サイズの大きい車の所有者が、機械式駐車場に停められずに他の駐車場を契約している」など、さまざまな要因でマンション駐車場の空きスペースが増えてきているという問題が起こっています。
当然空きスペースが増えると、駐車場収入も減少してしまいますよね。
そうなってしまうと、管理費の値上げなども検討しなければなりませんし、修繕積立金などの必要なお金が不足するケースも見受けられるようになってきました。
マンション駐車場の空きスペースが目立ってきたら、将来を見据えて空きスペースを有効活用することも1つの方法です。
対策としては、
- 1戸1台という制限を緩和する
- 外部に貸し出す
- サブリース会社と契約を結ぶ
- 他の用途で活用する
- 機械式駐車場をリニューアルしてサイズアップする
- 機械式駐車場の撤去
などの工夫で、いろいろと有効活用することができます。
ただし、マンションには駐車場の附置義務があったりなど、難しいルールも沢山あります。
マンション駐車場の空きスペースを有効活用したい場合には、まずは信頼できるメーカーやメンテナンス業者に相談して、詳しく聞いてみるとよいでしょう。
マンション駐車場を有効活用する方法について詳しく知りたい方は、「マンション駐車場を有効活用する方法(空きスペースの有効活用方法を解説)」をぜひご覧ください。
最後に
マンション駐車場のよくあるトラブルを5つまとめてご紹介しました。
駐車場トラブルで最も多い「違法駐車(無断駐車)」は使用方法を厳守している人はもちろん、マンションに来賓の方々にも大変迷惑をかける行為ですので、厳重に対処しましょう。
また、「車両を傷つけられた」「車の窃盗や車上荒らし」も見過ごせない行為ですので、迅速に対応していくことをお勧めします。
どんなトラブルにせよ、放置しておくと被害が拡大してしまう可能性が高いですので、管理組合として早めに対策を打つことが重要です。
パーキングドクタープラスでは、マンション駐車場に関する有益な情報をどんどん発信して参ります。ぜひ、その他の記事も読んでみて下さいね。
(参考資料:マンション理事になったらまず読む本)