機械式駐車場の寿命はどれくらい?メンテナンスや維持費などを解説

 

こんにちは。
パーキングドクタープラス編集部です。

マンションの機械式駐車場は1980年代後半から都市部で急速に普及していきました。(※引用1)
近年では建設されたマンションの約半分に設置されるほど身近な存在です。

そんな機械式駐車場ですが、バブル期以降に設置されたものが寿命を迎え、リニューアルをしようか、解体しようか、など頭を抱えている管理組合の方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は判断の指標となる機械式駐車場の「寿命」、「メンテナンスの方法」、「維持費」についてまとめてみました。

 

機械式駐車場の寿命はどれくらいなの?

一般的に資産には「法定耐用年数」というものがあり、機械式駐車場は15年と定められています。(※引用2)
15年経ったら機械式駐車場が使用できなくなるの?と思っている方もいるかもしれません。

法定耐用年数の使用用途は、減価償却費を算出するためで、実際の寿命を表したものではありません。

※減価償却とは、一般的には時の経過等によって資産の価値が減っていくものを減価償却資産とし、取得した段階で全額を経費計上するのではなく、耐用年数に応じて分割しながら経費にできることで、例えば機械式駐車場は耐用年数が15年なので、15年に渡って減価償却費を計上できるということです。(※引用3)

それでは実際の機械式駐車場の寿命はどうなるかというと、日ごろからメンテナンスをしっかりと行っていれば15年よりも長くすることが可能です。逆にメンテナンスを怠っていると15年よりも短くなってしまいます。

一般的にはしっかりとメンテナンスを行っていれば、20年~25年使用可能な場合が多くありますが、行っていなければ法定耐用年数の15年に満たない寿命となる可能性もあります。

しかし、どんなにしっかりとメンテナンスを行ったとしても将来的には必ず寿命は訪れ、それに伴い総入れ替え、もしくは撤去が必要となります。寿命が過ぎても使い続けることは、重大事故にも繋がりかねないので、注意が必要です。

 

機械式駐車場のメンテナンスはどうやっているの?

機械式駐車場の保守点検ですが、エレベーターなどの設備とは異なり、実は法的に定められた点検義務はありません。

しかし、法的な点検義務がなくとも国土交通省が策定した『機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針』や『機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン』では、以下の通り管理者の責任として取り組むべき内容が示されています。

機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針(第二章第1)

管理者は、自ら適切に保守・点検を行う場合を除き、保守点検契約に基づき、機械式駐車設備の使用頻度に応じて、定期的に保守・点検を保守点検事業者に行わせるものとする。

(機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針より引用)

機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドラインⅣ-4 管理者の取組

装置の安全確保のための維持保全を行うこと。装置が正常で安全な状態に維持できるよう、機種、使用頻度に応じて、1~3ヶ月以内に1度を目安として、専門技術者による点検を受け、必要な措置を講じること。

(機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドラインより引用)

 

ここで言う「管理者」とは、マンションであれば一般的に管理組合が該当します。

なお、管理者の業務の一部は管理会社やメンテナンス業者(=保守点検業者)に委託されることが多いです。

機械式駐車場にメンテナンスが必要な理由は「故障による事故を未然に防ぐこと」「機械式駐車場の性能や美観を保ち、末永く使えるようにする」という2つの理由があります。

メンテナンスの考え方としては、「予防保全」と「事後保全」があります。

 

予防保全とは?

まず「予防保全」についてお話します。
予防保全とは、部品が壊れる前に交換するという考え方です。

予防保全の考えに基づいて修繕をすると、部品が壊れる前に交換するので突発的な故障は起こりにくくなります。

予防保全は、部品の故障によって重大事故が起こってしまうリスクを下げることができます。

しかし、故障していない(まだ使える)部品を交換するので、コストを安く抑えることは難しくなります。

 

事後保全とは?

次に「事後保全」についてです。
事後保全とは、部品の故障が発生したら交換するという考え方です。

事後保全の考えに基づいて修繕すると、部品が故障したらその都度修繕するので「壊れた部品の修繕費用だけで済む」と、思っている方が多いと思います。

しかし、仮に機械式駐車場の故障が起きた場合、その故障が原因で車やその他の部品に損傷が発生するなど、その修理だけで済まなくなる可能性もあります。

機械式駐車場を修理する必要が出たら「今すぐに修理するかどうか」「修理するならどの範囲までやるか」など、その都度マンション理事会で決定しなければなりません。

また、故障してしまうと理事会で決定するまで修理ができないため、何日も機械式駐車場が使えない状態が続きますし、機械式駐車場の管理者であるマンション管理組合の理事の負担は、当然ながら大きくなってしまいますよね。

思っているよりも、事後保全の方法では大変だということがお分かりいただけたかと思います。

 

次に機械式駐車場の保守契約について見ていきましょう。

機械式駐車場に関するメンテナンスには、POG契約とフルメンテナンス契約の2つの契約形態があります。

 

機械式駐車場の「POG」契約とは?

機械式駐車場の「POG」契約POGとは「Parts (パーツ)、Oil (オイル)、Grease (グリス)」の略です。

POG契約は定期的なメンテナンス、軽度の消耗品、チェーンなどに塗布するオイルなどが、契約に含まれます。

それ以外の修繕工事は、契約に含まれていないため、その都度追加費用として支払う形式です。

POG契約は、最近主流の契約形式です。

 

機械式駐車場の「フルメンテナンス」契約とは?

機械式駐車場の「フルメンテナンス」契約

フルメンテンナンス契約とは、通常のメンテナンスに加え修繕費用がメンテナンス費用に含まれている契約です。

この修繕費用には、10年後や15年後など将来交換する予定の部品費用も含まれています。

ただし、天災(地震や洪水など)や人災(人の不注意や過失、怠慢など)による故障、塗装などは含まれていないケースが多いです。

 

POG契約とフルメンテナンス契約のメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は、『機械式駐車場の保守契約(1)POGとフルメンテナンスの違い』をご覧ください。

 

機械式駐車場の維持費はどれくらいかかるの?

(出典:国土交通省|マンション修繕積立金に関するガイドラインより )

 

機械式駐車場の維持費についてですが、このように国土交通省ではマンションの区分所有者・管理組合向けに、修繕積立金の額の目安を示し、修繕積立金の額の水準について判断する際の参考材料として「マンション修繕積立金に関するガイドライン」を作成しています。

修繕積立金には、機械式駐車場を維持するための保守点検の費用や、その他にも5~7年ごとの再塗装の費用、そして部品交換の費用などが含まれています

保守点検・再塗装・部品交換の費用に関しては、メーカーやメンテナンス業者によって大きく異なります。

なので、安いメンテナンス業者を選んだり、メンテナンス自体を先延ばしにしたりと、なるべく修繕費を抑えようと考えてしまうかもしれません。

ですがきちんとメンテナンスや修繕を行わないと、機械式駐車場の寿命が早まり、機械式駐車場を新しいものに入れ替えなければならない可能性があります。

そうなってしまうと、積立金では賄えないような多額の修繕費が発生してしまいます。

まずは複数の業者に問い合わせて相見積もりを依頼し、信頼できる業者を選び、定期的なメンテナンスや修繕をお願いすることで、機械式駐車場を長く利用できるようにすることが、のちの修繕費を抑えるための重要なポイントとなります。

 

最後に

機械式駐車場を維持するための修繕費は、決して安く済むものではありません。

ですが、メンテナンスの方法やメンテナンス業者の選定、適切なタイミングでの部品の交換や再塗装などにより、機械式駐車場はしっかりとメンテナンスをすれば長く安全に使えるようになります。

そして、マンション住民の方が安心して利用できる駐車場になるといいですね。

パーキングドクタープラスでは、マンション駐車場に関する有益な情報をどんどん発信して参ります。ぜひ、その他の記事も読んでみて下さいね。

 

(引用1:国土交通省|機械式駐車設備の安全基準に係る日本工業規格の制定についてより)
(引用2:東京都主税局|償却資産の評価に用いる耐用年数より)
(引用3:国税庁|減価償却のあらましより)

 

 

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