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こんにちは。
パーキングドクタープラス編集部です。
限られたスペースを有効活用できる機械式駐車場。様々なマンションやビルでも、暮らしを支える装置として多くの人に利用されています。その一方で、悲しいことですが機械式駐車場における死亡事故・重傷事故が少なからず起きているのも事実です。
マンション住民の方が、安心・安全に生活できるよう環境を整えるのも管理組合の仕事です。自分の住んでいるマンションで痛ましい事故を起こしたくはありませんよね。
そこで今回は、機械式駐車場でどのような事故が多いのか?
また、事故を起こさないために利用者と管理者はどのようなことを注意するべきなのか?をご紹介したいと思います。
機械式駐車場で起こる事故について
大きなパレットを動かす機械式駐車場は、使い方を誤ると大変危険な駐車装置です。
実際に、国土交通省はじめ関係各所から注意を促すパンフレットが度々発行されています。それだけ機械式駐車場というのは、使い方を間違えると重大な事故に繋がる危険性が高い機械なのです。
では、機械式駐車場では、どれくらい事故が起きているのでしょうか?
国土交通省が行った2016年(平成28年度)の調査によると、平成19年度以降32件の事故が発生しています。そのうち、死亡事故は12件発生しており、12件中子供が亡くなる痛ましい事故が3件も発生していることが分かりました。(出典:国土交通省 機械式立体駐車場の事故情報より)
ちなみに、機械式駐車場の事故のうち、マンション駐車場で発生した事故が全体の55%と半数以上を大きく占めています。
機械式駐車場でどんな事故が起きているの?
機械式駐車場における主な事故は、
・登降室内への閉じ込め
・作動中の装置に接触
・巻き込み
・機械に挟まれる
・乗り降りや歩いているときの転倒
・転落
・車両の入出庫時の衝突
など、色々とあります。
最も多い発生状況は、装置内に人がいる状態で機械が作動したために起こった事故でした。装置内に人がいるか確認を怠ったことが原因です。
また、子供が思わぬ行動をして機械式駐車場で事故にあってしまった事例も、国土交通省が行った調査のうち約26%と数多く起きています。(出典:国土交通省 機械式立体駐車場の事故情報より)
次に、マンション駐車場で起きたいくつかの事故例をご紹介したいと思います。
子供を連れた利用者の方が、多段式の機械式駐車場から車を出すときに発生した事故です。
地下に降りたパレットに駐車していた車を出すため、出庫ボタンを操作していたところ、子供が駐車装置内に立ち入り、地下から上昇中のパレットに飛び乗ろうとしたところ転倒。上昇してきたパレットと隣にある装置の間に挟まれて亡くなってしまいました。
本来なら、利用者の方は操作ボタンで装置を停止させればよかったのですが、残念なことに利用者の方は使ってはいけない、操作ボタンを押しっぱなしにできる固定器具を使っていたため、すぐに操作を止めることができませんでした。(出典:政府広報オンラインより)
エレベーター式の機械式駐車場で車を入れようとした時に起きた事故です。
同乗していた子供を先に降ろした後、子供が装置の外に出たと思い込んでしまい、急いでエレベーターの扉を閉めたところ、中に子供がまだ残っていました。
扉を開けようと出庫操作ボタンを押したところ、車の向きを変えるパレットが作動してしまったため、子供はパレットと壁に挟まれて亡くなってしまいました。(出典:政府広報オンラインより)
利用者の方が装置内にいることに気づかずに別の方が装置を稼働させてしまったため、利用者の方が装置に巻き込まれて亡くなってしまいました。
装置には人感センサーが設置されていたのですが、故障したまま放置されたがためにこのような事態になってしまいました。
そして、操作盤には安全確認ボタンがついていませんでした。(出典:機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドラインⅥ-4 p43より)
このように、実際に起きた事故の事例を見てみると、「機械装置の故障」によって事故が起きてしまったことが分かります。
機械式駐車場はもともと装置内に人が入らないことを前提として開発されています。設計段階では、駐車装置の知識や技能に詳しい専門の係員が操作することを想定して作られたそうです。
しかし、マンション駐車場を日常的に使っているのは、専門知識や技能を持たない一般人です。そして、子連れの利用者の方も多く、子供は予想外の行動をしてしまいがちです。
このような痛ましい事故を起こさないよう、関係する省庁や事業者団体でルールの見直しに取り組んでいたり、メーカーは事故が起きにくい仕様に変更したりしています。
しかし、すでに設置されている機械式駐車場については、事故が起きにくい仕様の新しい機械式駐車場に取り換えられるまでは、利用する方の一人ひとりの心がけが大切です。
機械式駐車場を利用する時の注意点について
では、実際に私たち利用者はどのようなことに注意して機械式駐車場を利用すれば良いのでしょうか?
国土交通省が出した「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」を参考に、機械式駐車場の利用者(マンション住民)とマンション駐車場の事実上の管理者(マンション管理組合)が早期にやるべき安全対策をまとめてみました。
※ここで言う利用者とは、機械式駐車場を利用するマンション住民のこととします。
運転手以外は装置の外で乗り降りしましょう。幼児などを同乗させたまま入庫する場合は、装置から退出したことを必ず確認した上で操作しましょう。
機械の操作をしている最中というのは、どうしても子供から目を離しがちになってしまいますよね。
大人が目を離した隙に、子供が装置の隙間に転落する事故が発生しています。子供が装置内に近づかないよう常に手を繋ぎ、目を離さないようにしましょう。
操作盤に他の利用者の鍵が挿した状態である場合、装置内に人が残っている可能性が高いです。もし、操作盤に他人の鍵が挿っていたとしても、絶対に操作しないようにしましょう。
次に、主な機械式駐車場の形式別に注意点をまとめてみました。
・人がいるかどうか隅々まで確認しましょう。操作盤の位置からは人がいないように見えても死角になっている可能性があります。
・操作内に人が立ち入らないようにしましょう。もし前面にチェーンがあるなら、必ず掛けておきましょう。
・機械式駐車装置の中には、操作ボタンを押し続けることによって装置が稼働するタイプがあります。「ボタンを押し続けるのが面倒くさい」と、この操作盤の操作ボタンを器具で固定する方がいらっしゃいます。器具で固定してしまうと安全機能が働かず、緊急時の停止ができません。絶対に固定器具は使わないようにしましょう。
・事故の多くは装置内に人がいるかいないかの確認を怠り、操作してしまったことで起きています。人感センサーが設置されたとしていても、完全に人の感知ができるという訳ではありません。人感センサーに頼ることなく、自分の目でしっかりと装置内に人がいるかいないかの確認をしましょう。
・もし、操作内に閉じ込めなどの不測の事態が発生したら、すぐに非常停止ボタンを押しましょう。そして、操作盤に記載されている緊急連絡先にすぐに連絡しましょう。日頃から、どこに非常停止ボタンがあるかを把握しておくとよいでしょう。
マンションの場合、一般的に管理組合が駐車場の管理者となっています。しかし、管理業務の一部は管理会社やメンテナンス業者(保守点検事業者)に委託されているケースが多くあります。
利用者の方が機械式駐車場の使い方を正しく認識していないと、誤った操作をしてしまい、事故を引き起こす可能性が高まります。
ですので、機械式駐車場の利用者であるマンション住民に対して、パンフレットや取扱説明書などの書面を配るなど、正しい操作方法や注意事項などを周知徹底を図ると良いでしょう。
事故につながるリスク、設置機種の事故事例、非常停止の方法などは、特に丁寧に説明できるとなお良いでしょう。できれば、実際の装置を使いながらの説明ができると、利用者の方の理解も深まるでしょう。
正しい操作方法や注意事項については、国土交通省、消費者庁、公益社団法人立体駐車場工業会などで、利用者向けの注意喚起の資料を作成・公開しています。
以下に資料のリンクを記載しました。
ぜひ、ダウンロードや印刷をして利用者であるマンション住民の方々への周知にお使いください。
■ 注意喚起(消費者庁共同)
https://www.mlit.go.jp/common/001055582.pdf
>■機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き(平成28年9月)
利用者の取り組み
https://www.mlit.go.jp/common/001145269.pdf
■公益社団法人立体駐車場工業会「安全利用パンフレット」
http://www.ritchu.or.jp/issue/#sec02
なお、国土交通省が発行した「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」には、これら安全な使い方、正しい操作方法の説明を受けた人に対してのみ、利用を許可することを求めています。
管理者である管理組合は、ガイドラインに従って装置の取扱説明を受けた人に対してのみ、暗証番号等を付与すると良いでしょう。
機械式駐車場には操作盤があるかと思います。その操作盤の見やすい位置に「無人確認」などの注意事項を記載したシールを貼っておくと良いでしょう。操作をする直前に目にすることができるため、注意すべきことを意識しやすいというメリットがあります。
万が一、事故にあったときに慌てずに適切な対処ができるよう、予め対処方法を決めておくことが大事です。
主な対処の流れは以下の通りです。
(1)まず、緊急停止ボタンを押しましょう
↓
(2)機械が止まったのを確認して負傷者を救護します
↓
(3)そのあと、警察(110)→救急(119)→メンテナンス業者→管理会社の順序に連絡しましょう
事故が起きてしまうと頭がパニックになってしまうのは当然のこと。そんな事態になることを想定して、操作盤のところにメンテナンス業者や管理会社の連絡先を掲示しておくことをおすすめします。
安全対策を実施できているか、自己チェックシートで判断
国土交通省では、管理者向けの自己チェックシートが公表されています。
装置内への侵入を防げるための対策が講じられているか?装置内への人の閉じ込めを防止するための処置がされているか?など、安全対策の評価を数字で明確に知ることができます。
管理者向けの自己チェックシートは国土交通省のホームページからダウンロードできます。
ぜひ、こちらを利用して改めて確認しておきましょう。
↓↓↓
国土交通省のホームページ
www.mlit.go.jp/common/001145264.pdf
事故防止には定期的な点検・メンテナンスが大事
機械式駐車場の装置が安全な状態で保てるよう、機種や使用頻度に応じて1~3か月に1度を目安に、メンテナンス業者による定期点検でメンテナンスを受けるようにしましょう。
国土交通省が発行した「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドラインの手引き」には『1~3か月以内に1度を目安として、専門業者による点検を受け、必要な処置を講じること』としっかり記載されています。
メンテナンス業者の目線でお話しさせていただくと、二段・多段方式はだいたい3か月おきのメンテナンスが多いです。また、エレベータ方式や多層循環方式などは毎月必ずメンテナンスを行うこととなっています。
装置は機械でできていますから、いずれは壊れます。
壊れてしまうタイミングというのは、部品の使用頻度や耐用年数によってそれぞれ違います。そのため、メンテナンス業者は適切な時期に交換できるよう早めに教えてくれるところがほとんどだと思います。
事故例のところでもお話ししましたが、実際に安全装置が故障していたために起きた悲しい事故がありました。本来、装置には人感センサーが設置されていたにも関わらず、その装置が故障していたために、人が装置内にいるのを検知できずに起こった事故でした。
この事故は、定期的なメンテナンスを受けて修理をしていたら発生しなかった事故かもしれません。
今後このような悲惨な事故を起こさないためにも、機械式駐車場を安全に使用していただくためにも、メンテナンス業者による定期的な点検や部品の交換や修理は、絶対に必要です。
とはいえ、正直なところメンテナンス業者であれば、どこも同じという訳ではありません。メンテナンス業者によって、技術面や価格でバラツキがあるのも確かです。
もし、現在取引しているメンテナンス業者の対応が悪くてお困りの点があるようでしたら、セカンドオピニオン的に別の業者に一度見積もりを取ってみるのもおすすめです。
機械式駐車場の使い方の注意点まとめ
機械式駐車場は、限られた敷地を有効活用するのに大変便利な設備です。しかし、いったん事故が起これば、重大事故に陥る危険性が高い装置であることを忘れてはなりません。
管理者の立場であるマンション管理組合は、利用者であるマンション住民にしっかりと説明をすることが大切です。
それと同時に装置の点検や部品の交換・修理も忘れてはなりません。1~3か月に1回は必ずメンテナンス業者から点検してもらい、劣化や故障が見つかったら早い段階で交換や修理を行いましょう。
管理組合のこのような取り組みこそが、マンション駐車場の事故の防止に繋がるはずです。
マンション駐車場内で起こる事故を防ぐため、ぜひ本記事を参考に取り組んでみてくださいね。