こんにちは。
パーキングドクタープラス編集部です。
マンション運営について専門的な知識を持っていないマンション管理組合の理事たちの助けになってくれるのが、マンション管理士という専門家です。
マンション管理士は管理組合の運営、規約の制定や改定など、マンション管理全般の問題に対して第三者の目線でアドバイスをしてくれる頼もしい存在です。
しかし、実際にマンション管理士について詳しく知る人は、なかなかいないのではないでしょうか?
そこで今回は、マンション管理士の仕事や役割について詳しくご紹介致します。
マンション管理士とは
マンション管理士とは、マンション管理の専門知識を持ったスペシャリストのこと。マンション管理組合の運営、大規模修繕等を含む建物構造上の技術的な問題、マンションの法律や知識など、マンション管理に関するさまざまな問題に対して適切な助言や指導を行います。
マンション管理士は、2001年のマンション管理適正法化に従って創設された比較的新しい国家資格です。国土交通大臣が試験主体となっています。ちなみに合格率は8%前後と難関試験として有名です。
マンション管理士になるには、マンション管理士試験に合格してから、マンション管理士として登録する必要があります。
そもそも、なぜマンション管理士という資格が生まれたのでしょうか?
それは、マンション管理に関しての問題が山積みだからです。
現在、国内のマンションに住む人は、日本全人口の1割を超えて今後ますます増える傾向にあります。区分所有者(分譲マンションの住民)が増えれば、それだけトラブルや問題の数が増えていきます。
しかし、マンションの管理組合の方々のほとんどが一般住民であって、マンション運営や管理に関しては全くの素人です。そのため、さまざまなマンション関連トラブルを未然に防ぐことが困難だったり、問題が起こった後の対処法が分からずに頭を抱えてしまっています。
また、年月が過ぎれば当然のごとくマンションは老朽化してきます。
いずれ大規模修繕工事を行わなくてはならないときが必ずやってきてしまいます。
とはいえ、マンション管理について素人同然の管理組合が、建物をどのように修繕すればいいのか、分かるはずがありませんよね。
そんなときに頼りになるのが、マンション管理士です。
長期修繕計画の策定と必要であればその見直し、修繕工事のアドバイスなど、管理組合の運営や建物の技術的な問題に対して、適切な指導や助言、援助を行います。
マンション管理のプロフェッショナルだからこそ、マンション管理組合の頼もしい存在になることは間違いないでしょう。
マンション管理士と類似しやすいのが、管理業務主任者という資格です。
管理業務主任者とは、
「管理業務主任者」とは、マンション管理業者が管理組合等に対して管理委託契約に関する重要事項の説明や管理事務報告を行う際に必要な国家資格者のこと
(引用:一般社団法人マンション管理業協会より)
という、国家資格を持つ人のことをいいます。
どちらの資格も国家資格であり、試験範囲も必要な知識も似ていることから、同じような資格なのでは?と誤解されやすいようですね。しかし、置かれている立場は異なります。
マンション管理組合や区分所有者からの相談に応じ、適切な助言や指導を行うマンション管理士に対して、管理業務主任者はマンションを管理するマンション管理会社側にいて管理業務を行います。
マンション住民側に立つマンション管理士と管理会社側に立つ管理業務主任者とでは、立ち位置が全く異なり、当然ながら業務内容も違うことになります。
マンション管理士の主な役割
マンション管理士は、マンション管理組合の業務をいろいろな面からサポートする役割にあります。
具体的な業務について詳しく見ていきましょう。
マンション管理士は、マンション管理組合の総会や理事会などの運営サポート、管理費や修繕積立金の会計監査、予算案や改正案の作成を行います。他にも「管理会社との契約を見直したい」「滞納している管理費の回収を手伝ってほしい」といった悩みに対しても適切なアドバイスをします。
また、年月と共に劣化してきた建物の大規模修繕工事の内容や範囲、費用が適切かどうかなどの精査を行います。修繕工事を依頼する施行会社選び、修繕に伴う手続き、急な災害によって被害にあったときの修繕取りまとめなどのコンサルティング業務を行うこともあります。
マンションには、様々な年代や家族構成の人たちが住んでいます。価値観や考え方は、人それぞれ違いますから、時には住民(区分所有者)間でトラブルが発生してしまうこともあるでしょう。特に多いトラブルといえば、喫煙マナー、ペット問題、騒音トラブル、ゴミ出しルール違反、共用部分を使う際のマナー違反などです。
マンション管理士は、マンション住民の全員が納得して暮らすためのルール(規約)の作成や改正、トラブルを未然に防いだり、トラブル後の対処を行います。マンション管理の専門家であり、第三者という立場だからこそ、ややこしい住民トラブルにもうまく対処できるというわけです。
マンション管理士は、管理規約の作成や改正などを行います。
管理規約とは、マンションを管理や運営する上での基本的ルールのこと。マンションの共用部分の範囲や使用方法、理事会の権限や義務など、マンション管理組合の運営に必要なことが記載されています。
これらの管理規約の作成、更新や改正する際に専門家としての知識や経験をもとに、管理組合の相談やアドバイスに乗ったりします。
マンションが大規模になればなるほど、マンションの管理は幅広くなり、それに比例して管理組合側の負担も多くなります。
マンション管理組合だけでマンション管理全般を行うのは難しくなり、知識やノウハウ豊富なマンション管理会社と契約してマンション管理全般を任せることも多いのではないでしょうか。
当然ですが、マンション管理組合はマンション管理会社より知識はありません。それを良いことに本来厳守すべきマンション管理適正化法をきちんと守っていないマンション管理会社が少なからずいるのは確かです。
国土交通省が平成30年に行った「マンション管理業者への全国一斉立入検査結果」によると、全国146社に対して立入検査を行った結果、63社に対して是正指導を行ったとの報道発表が出ています。
マンション管理組合は、マンション管理会社の良し悪しの判断が付かないまま、マンション管理会社と契約していることもあるでしょう。良くないマンション管理会社の例を挙げると、相場に比べて高い管理委託費を請求したり、マンション管理会社が行わなければならない業務をしていなかったり(要するに手抜き)です。
そこで頼りになるのがマンション管理士です。マンション管理士は、区分所有者と管理会社の間に立ち、公平な立場で管理会社が適正に業務を行っているかどうかをチェックする役割があります。管理会社の業務監査はもちろん、管理会社との交渉などに対してもアドバイスしてくれます。
マンション管理士は機械式駐車場の修繕にも対応してくれるの?
マンションの大規模修繕や設備の交換についての助言や指導を行ってくれるマンション管理士ですが、機械式駐車場の修繕工事の相談にも対応してくれるのでしょうか?
結論からいいますと、マンション管理士が機械式駐車場の事柄に対応することは難しいでしょう。なぜなら、マンション管理士は大規模修繕等を含む建物構造上の技術的な知識やノウハウは持っていますが、機械式駐車場についての知識やノウハウを持っていないからです。
機械式駐車場の維持管理は、マンション管理会社が機械式駐車場のメンテナンス業者に委託しています。ですから、機械式駐車場の修繕や故障については、管理会社が委託しているメンテナンス業者と話し合う必要が出てきます。
メンテナンス業者選びの大半は、マンション管理会社が独自で選んでいます。しかし、メンテナンス業者によって良し悪しがあるのも確かです。機械式駐車場が適正に管理や修繕されるかどうかは、メンテナンス業者によって大きく差が出てくるのです。
機械式駐車場は、利用者の命に係わる事故が起きる可能性もある設備です。だからこそ、事故が起きないようしっかりとメンテナンスをしてくれる、信頼できる業者を選びたいですよね。
マンション管理士まとめ
マンション管理士は、管理組合の運営やマンションの維持管理、区分所有者の相談に応じ、適切な助言や援助を行ってくれるマンション管理のスペシャリストです。
的確なアドバイスができるマンション管理士は、管理組合にとっては非常に頼れる存在と言えます。
ただし、機械式駐車場については専門知識を持たず具体的なアドバイスがもらえないので、そこは注意してください。機械式駐車場で気になるところがあれば、信頼できるメンテナンス業者に相談してみてくださいね。
参照:公益財団法人マンション管理センター「マンション管理士とは?」
参照:国土交通省 報道発表資料「マンション管理業者63社に是正指導~全国一斉立入検査結果(平成30年度)~」