目次
こんにちは。
パーキングドクタープラス編集部です。
都心の限られたスペースでも一定量の収容台数を確保することができる機械式駐車場は、多くのマンション住民が暮らすマンションにおいて、欠かすことができない設備となっています。
しかし、機械式駐車場といっても様々なタイプがあり、車の収容方法や機械式駐車場の操作方法などは、それぞれの種類によって異なります。
もし、あなたがマンション理事会の理事でしたら、自分のマンションにある機械式駐車場が、どのようなタイプで、どのような特徴があるのか?を知っておけば、将来かかるであろう修繕費などの計算に、きっと役立つはずです。
今回は、機械式駐車場の種類や、それぞれの特徴についてお話ししたいと思います。
二段方式・多段方式の機械式駐車場
「二段方式」は、駐車している自動車の上(または下)に別の自動車を駐車させることができる駐車場のことです。
三段以上あるものを「多段方式」といいます。
国土交通省が出した「機械式駐車装置の安全対策」の資料によると、機械式駐車場の種類別 累計設置割合で最も多いのが「二段方式・多段方式」で、全体の6割以上を占めています。
二段式、多段式のどちらも自動車を昇降させる機構には、ロープ法、チェーン法、油圧法などがあります。
また、二段方式や多段方式には「昇降式」と「昇降横行式」の2つのタイプに分けられます。
「昇降式」は、自動車を載せるパレットが上下に移動して入出庫するもので、「昇降式横行式」は、上下パレットが動くだけでなく、左右にもパレットが移動できるものです。
最近では、従来の昇降横行式に加えて前後にも駐車できる「縦列式」というタイプも発売されています。
地上の上下に自動車を2台停めることができる。車を載せるパレットを昇降させて、車を出し入れすることができる最も単純な機械式駐車場。
ピットとは穴のこと。地下に1台分の駐車スペースを掘り、二段式パレットによって車を昇り降りさせることができる機械式駐車場。下にパレットが格納されている時は、目に見える部分が平面駐車場と同じように見え、景観を損ねない。
初めから一台分の空きスペースがあるため、そのスペースを利用して上下左右スムーズに自動車を移動させることができる。パズル式とも言われている。
改正駐車場法施行規則施行(H27.1.1)以後に、国土交通大臣の認定を受けた装置の製造メーカーは以下の通りです。(順不同)
・IHI運搬機械株式会社
・新明和パークテック株式会社
・株式会社豊国パーキングシステム
・日栄インテック株式会社
・株式会社ニッパツパーキングシステムズ
など
垂直循環方式の機械式駐車場
機械式駐車場の種類別 累計設置割合で「二段方式・多段方式」の次に多いのが「垂直循環方式」という機械式駐車場です。
垂直循環方式は、設置数全体の15%ほどを占めています。
垂直循環方式は自動車を駐車させる複数のパレットを、垂直面内に円形または長円形に配置して、連続循環させながら移動します。観覧車をイメージすると分かりやすいかもしれません。
垂直循環方式には、自動車が乗り入れる位置によって、下部乗入式、中間乗入式、上部乗入式の3つの形式に分けられます。
ビルなどに設置されている垂直循環方式の機械式駐車場は中間乗入式や上部乗入式がありますが、マンションの場合は1階部分に出入口を設けた下部乗入式が多いです。
改正駐車場法施行規則施行(H27.1.1)以後に、国土交通大臣の認定を受けた装置の製造メーカーは以下の通りです。(順不同)
・三菱重工機械システム株式会社
・住友重機械搬送システム株式会社
・新明和工業株式会社
・日精株式会社
など
エレベータ方式の機械式駐車場
エレベータ方式の機械式駐車場とは、複数のパレットを立体的に配置し、搬送装置によって車を特定のスペースへ搬送することによって駐車させる、大型の機械式駐車場です。
自動車を載せたパレットが昇降装置によって、決められたスペースに運ばれるというイメージです。
昇降装置から駐車室への搬送には、スライドフォーク、くし形フォーク、コンベア、ドーリーなどの装置が使われています。
改正駐車場法施行規則施行(H27.1.1)以後に、国土交通大臣の認定を受けた装置の製造メーカーは以下の通りです。(順不同)
・IHI運搬機械株式会社
・三菱重工機械システム株式会社
・日本ケーブル株式会社
・日精株式会社
など
多層循環方式の機械式駐車場
多層循環方式の機械式駐車場とは、図のようにパレットが上下左右に動いて特定の場所まで車を移動させる方式の機械式駐車場です。
循環させる形式によって「円環循環式」と「箱型循環式」の2タイプがあります。
「円形循環式」は、パレットが円を描くように上下左右に移動するので、入出庫処理の時間が短く、円滑性に優れています。
「箱型循環式」は、両端のパレットがエレベータの様に上下に動くので、それほど円滑性は期待できませんが、その分駐車台数を増やすことができ、限られたスペースを有効活用できるという特徴があります。
改正駐車場法施行規則施行(H27.1.1)以後に、国土交通大臣の認定を受けた装置の製造メーカーは以下の通りです。(順不同)
・日精株式会社
・ダイコー株式会社
・日本ケーブル株式会社
・IHI運搬機械株式会社
など
水平循環方式の機械式駐車場
水平循環方式は、駐車スペースを水平方向に最大限活用できる機械式駐車場です。
図のように多数のパレットを2列以上配置して循環移動します。自動車が通る道を省いて収容台数を増やし、駐車場の面積を節約することができるというメリットがあります。
この方式も「円型循環式」と「箱型循環式」がありますが、実際に設置されているもののほとんどが箱型循環式です。
また、水平循環方式は地上ではなく、地下駐車場として利用されることが多いです。
改正駐車場法施行規則施行(H27.1.1)以後に、国土交通大臣の認定を受けた装置の製造メーカーは以下の通りです。(順不同)
・IHI運搬機械株式会社
・三菱重工機械システム株式会社
・日精株式会社
・住友重機械搬送システム株式会社
など
エレベータ・スライド方式の機械式駐車場
エレベータ・スライド方式とは、エレベーター方式の昇降装置に走行機能を付け加えた機械式駐車場です。上下左右・前後に車を乗せたパレットが駐車スペースに動きます。
エレベータ方式と同じく、駐車室を昇降装置の前後方向に設ける縦式と、左右方向に設ける横式のタイプがあります。上図は横式のエレベータ・スライド方式の機械式駐車場です。
エレベータ・スライド方式は、全体の設置割合(台数)の1%ほどです。
もともと設置されている台数が少なく、あまり見かけない形式です。
どの種類も安全面には十分配慮しよう
このように機械式駐車場には、さまざまな種類のものが存在しています。
利用者にとって非常に便利な設備ではありますが、機械式駐車場は自動車を載せて動かすために大きな力が働きます。
動いている装置に人が巻き込まれると、重大な事故をもたらす危険が高い設備でもあります。
実際に多数の死亡事故が起こっています。平成19年度以降、死亡や重傷に至った事故は少なくとも36件も発生しており、発生場所としてマンションの駐車場が56%と最も多く占めています。
装置内に人がいることを知らずに機械を作動させてしまったり、安全装置を無視(解除して)自分でパレットに乗り込んだりなど、事故のほとんどがヒューマンエラーによる事故となっています。
「きっと大丈夫だろう」「たぶん安全なはず」という思い込みで機械式駐車場を使用すると、重大事故を起こしてしまう可能性があるということを、機械式駐車場の管理者であるマンション管理組合もマンション住民の方々へ周知していかなくてはなりません。
新たな安全基準に基づく機械式駐車場
機械式駐車場の事故を減らすために、国土交通省では駐車場法施行規則を改正し、今後新しく機械式駐車場を設置する場合は、国土交通大臣の認定を受けることが義務付けられました。(平成27年1月施行)
これにより、機械式駐車場装置を新しく設置する場合は、設置者は駐車場法に基づいて都道府県知事などに対する届出を行うことが義務付けられています。
駐車場に機械式駐車装置を設置する場合は、製造者(機械式駐車装置のメーカー)があらかじめ国土交通大臣の認定を受けている装置でなければ、設置が認められません。
新基準に基づく国土交通大臣の認定を受けた機械式駐車装置について詳しく知りたい方は、国土交通省のホームページに詳細が記載されています。
■国土交通省 「駐車場法施行規則の一部を改正する省令」(平成27年1月1日施行)について
http://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_gairo_tk_000068.html
新しい安全基準によって、今後新たに設置される機械式駐車場については、機械式駐車場の設置者(機械式駐車装置メーカー)に対して、さまざまな安全対策を講じることが義務付けられています。
「機械式駐車場の安全対策に関するガイドラインの手引き」の中で、製造者である機械式駐車装置のメーカーが早期に取り組むべき安全対策がまとめられています。
その中で記載されている安全対策は以下の通りです。
・昇降横行式又は地下構造を有する装置には、前面ゲート及び柵を設置すること。
・前面ゲートは、チェーン・スプロケット等の稼動部に子供が容易に触れることのない構造とすること。
・装置の稼動状況等を目視によって確認できる位置に操作盤を設置すること。
・前面ゲートを有する装置については、呼び出した搬器等が着床していなければゲートが開かない機能(インターロック)を有すること。
・乗降室内に人が入っている状態で、装置が稼動しない機能を有すること。
・利用者が操作位置からも乗降室内の安全を確認できるモニター等を設置すること。
・出入口扉は、呼び出した搬器等が着床していなければ開かない機能(インターロック)有すること。
・乗降室内で人が装置の旋回運動に巻き込まれることがないよう退避場所を設けるとともに、視認しやすい 非常用脱出口、非常ボタン等を設けること。
マンションの機械式駐車場は規制対象?
上で述べている駐車場法の規制ですが、実は利用者が特定されているマンションの駐車場については、必ずしも規制の対象とはなっていません。
しかし、自治体などの条例によっては、新しく建築される建物で駐車場の附置が義務付けられている場合、マンション駐車場であっても国土交通省の認定を受ける装置の設置が義務付けられる場合があります。
また実際には、新安全基準を満たした装置のみしか設置しないメーカーがほとんどです。
機械式駐車場をリニューアルしたり、新しく設置する場合は、以前の基準と変わっている場合があるので、しっかりと確認しておきましょう。
機械式駐車場の種類まとめ
機械式駐車場の種類には、二段・多段方式、垂直循環方式、エレベータ方式など、さまざまな種類のものが存在します。
収容方法や使い方は、それぞれの種類によって異なりますので、自分のマンションに設置されている種類がどのタイプなのか、そしてどのタイプがあなたのマンションに一番合っているかを確認すると良いでしょう。
マンション管理を行う理事の方々は、利用者の安全のために必要な措置を講じ、正しい利用方法などを周知することが大切です。
もし、機械式駐車場の故障が頻繁に起きているなら、それはきちんとメンテナンスされていない可能性があります。
ぜひ一度、セカンドオピニオン的に別のメンテナンス業者に診てもらうことをオススメします。