機械式駐車場の保守契約(1)POGとフルメンテナンスの違い

 

こんにちは。
パーキングドクタープラス編集部です。

マンション管理組合の仕事の一つに、共有部分の維持管理があります。
そして、その維持管理の中には、機械式駐車場も含まれます。

機械式駐車場の維持管理というのは、主に「点検」「定期メンテナンス」「修繕」のことを言います。

もちろん、これらの作業はマンション管理組合だけで行うことは難しいので、メンテナンス業者に依頼し、保守契約を結ぶこととなります。

しかし、実はこの保守契約には、大きく分けて2つの種類があるのをご存じでしたか?

今回は、なぜ機械式駐車場に定期メンテナンスが必要なのか?そして、保守契約の種類についてお話ししたいと思います。

 

メンテナンスの必要性について

メンテナンスの必要性について

機械式駐車場の保守点検ですが、エレベーターなどの設備とは異なり、実は法的に定められた点検義務はありません。

しかし、法的な点検義務がなくとも国土交通省が策定した『機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針』や『機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン』では、以下の通り管理者の責任として取り組むべき内容が示されています。

機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針(第二章第1)

管理者は、自ら適切に保守・点検を行う場合を除き、保守点検契約に基づき、機械式駐車設備の使用頻度に応じて、定期的に保守・点検を保守点検事業者に行わせるものとする。

(機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針より引用)

 

機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドラインⅣ-4 管理者の取組

装置の安全確保のための維持保全を行うこと。装置が正常で安全な状態に維持できるよう、機種、使用頻度に応じて、1~3ヶ月以内に1度を目安として、専門技術者による点検を受け、必要な措置を講じること。

(機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドラインより引用)

 

ここで言う「管理者」とは、マンションであれば一般的に管理組合が該当します。

なお、管理者の業務の一部は管理会社やメンテナンス業者(=保守点検業者)に委託されることが多いです。

 

機械式駐車場にメンテナンスが必要な理由

機械式駐車場にメンテナンスが必要な理由は「故障による事故を未然に防ぐこと」「機械式駐車場の性能や美観を保ち、末永く使えるようにする」という2つの理由があります。

実際に装置の維持保全が不十分であったことから、安全装置が作動せずに死亡事故に繋がった事例があります。

事故例:人感センサーの故障により人の存在を検知できず、装置に挟まれ死亡

事故例:人感センサーの故障により人の存在を検知できず、装置に挟まれ死亡

利用者が装置内に留まっていることに気づかずに、専任の取扱者が装置を稼動させたため、利用者が搬器に巻き込まれ死亡した。

装置には人感センサーが設置されていたが、故障したまま放置されていたため被災者を検知できなかった。 また、操作盤に安全確認ボタンは設置されていなかった。

(機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドラインより引用)

 

このような悲惨な事故が起きないよう、専門的な技術を持った業者による定期的な点検を行うことが求められているんですね。

また、定期的なメンテナンスによって、機械式駐車場の性能や美観を長く保つことができます。

錆止め剤を塗布した後の塗装

錆びてしまった部分を削り、錆止め剤を塗布した後、塗装しているところ。こういった修繕などを適宜行うことによって、故障などによる無駄な出費を抑え、美観も保ちます。

 

装置の寿命が延びるということは、機械式駐車場の老朽化を抑制し、マンション自体の資産価値を守ることにも繋がります。

故障や事故を防いで利用者の安全を守るためにも、機械式駐車場の寿命を延ばすためにも、定期的なメンテナンスは必要不可欠です。

 

機械式駐車場の保守契約について

機械式駐車場に関するメンテナンスには、POG契約とフルメンテナンス契約の2つの契約形態があります。

POG契約とフルメンテナンス契約には、それぞれ特徴やメリットとデメリットがあります。

 

機械式駐車場の「POG」契約とは?
機械式駐車場の「POG」契約

POGとは「Parts (パーツ)、Oil (オイル)、Grease (グリス)」の略です。

POG契約は定期的なメンテナンス、軽度の消耗品、チェーンなどに塗布するオイルなどが、契約に含まれます。

それ以外の修繕工事は、契約に含まれていないため、その都度追加費用として支払う形式です。

POG契約は、最近主流の契約形式です。

 

POG契約のメリット・デメリット

POG契約は、フルメンテナンス契約に比べてメンテナンス費用が安いところがメリットです。

費用を安く抑えられるのは、修繕費(部品交換など)がメンテンナンス費に盛り込まれていないからです。

逆にデメリットとしては、部品交換や修繕が必要になった場合、その都度出費が発生してしまうことです。

 

機械式駐車場の「フルメンテナンス」契約とは?
機械式駐車場の「フルメンテナンス」契約

フルメンテンナンス契約とは、通常のメンテナンスに加え修繕費用がメンテナンス費用に含まれている契約です。

この修繕費用には、10年後や15年後など将来交換する予定の部品費用も含まれています。

ただし、天災(地震や洪水など)や人災(人の不注意や過失、怠慢など)による故障、塗装などは含まれていないケースが多いです。

 

フルメンテナンス契約のメリット・デメリット

フルメンテナンス契約のメリットは、将来想定する修繕についての費用が盛り込まれているので、機械の故障や修繕をすることになっても、急な出費が発生する可能性が少ないことです。

デメリットは、POG契約に比べて月々のメンテナンス費用が高くなってしまうことです。

部品や修繕費用が含まれているので、費用が高くなるのは当然のことですが、その費用はPOG契約の約3倍程度とも言われています。

また、10年後15年後に交換する予定の部品代を含んだ契約ですので、途中で保守点検業者を変えてしまった場合、今まで支払った分の費用は返却されません。それが、トラブルの原因にも繋がることがあります。

月々のメンテナンス費用が高い上に、業者を変更した時に上乗せされた分のお金が返ってこないという理由から、最近ではフルメンテナンス契約は少なくなってきているのが現状です。

 

機械式駐車場の修繕時の考え方

機械式駐車場の修繕時の考え方

POG契約、フルメンテナンス契約、どちらを契約するにしても機械式駐車場を修繕するにあたり、知っておくべき2つの考え方があります。

それは「予防保全」「事後保全」という考え方です。

 

予防保全とは?

まず「予防保全」についてお話します。
予防保全とは、部品が壊れる前に交換するという考え方です。

予防保全の考えに基づいて修繕をすると、部品が壊れる前に交換するので突発的な故障は起こりにくくなります。

予防保全は、部品の故障によって重大事故が起こってしまうリスクを下げることができます。

しかし、故障していない(まだ使える)部品を交換するので、コストを安く抑えることは難しくなります。

 

事後保全とは?

次に「事後保全」についてです。
事後保全とは、部品の故障が発生したら交換するという考え方です。

事後保全の考えに基づいて修繕すると、部品が故障したらその都度修繕するので「壊れた部品の修繕費用だけで済む」と、思っている方が多いと思います。

しかし、仮に機械式駐車場の故障が起きた場合、その故障が原因で車やその他の部品に損傷が発生するなど、その修理だけで済まなくなる可能性もあります。

もし機械式駐車場が故障してしまった場合、修理が終わるまで車を出すことはできません。

機械式駐車場の利用者の方は、すぐに車を利用したくとも利用できないという不便が生じてしまうでしょう。

また、機械式駐車場を修理する必要が出たら「今すぐに修理するかどうか」「修理するならどの範囲までやるか」など、その都度マンション理事会で決定しなければならなりません。

マンション理事会での決定

機械式駐車場の管理者であるマンション管理組合の理事の負担は、当然ながら大きくなってしまいます。

そして、事後保全の考え方で最も心配なのが、事故に繋がる危険性があるということです。

特に、駆動部品であるチェーンやワイヤー類、パレットを円滑に横行させる横行車輪などが壊れてしまうと、大きな事故に繋がる危険性が高いということを念頭に置かなくてはなりません。

機械式駐車場の利用者の方の安心・安全を考えれば、部品が故障する前に交換する「予防保全」が理想的ではありますが、予防保全の実施時期によって費用は大きく変わる場合があります。

修繕方法については、メンテナンス業者とよく相談することをおすすめします。

 

機械式駐車場の保守契約まとめ

機械式駐車場の保守契約には、POG契約とフルメンテナンス契約の2種類があります。

どちらの契約にもメリットとデメリットがあり、どちらの契約があなたのマンションに合っているのかは、メンテナンス業者とよく相談して契約内容を決めることが大切です。

また、メンテナンス業者自体も非常に大切になってきます。

価格だけで決定するのではなく、技術力や知識、修繕への考え方、緊急時への対応などを含めて納得できる会社を選びたいですね。

 

 

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