こんにちは。
パーキングドクタープラス編集部です。
マンション管理において、機械式駐車場を安全に、かつ末永く使用できるように維持管理していくためには、保守点検や修繕をメンテナンス業者に依頼する必要があります。
機械式駐車場のメンテナンスの必要性や、保守契約については「機械式駐車場の保守契約(1)POGとフルメンテナンスの違い」でご紹介しました。
しかし実際、私たちメンテナンス業者が「普段機械式駐車場のどんなところを修繕しているのか」「どんなところを見れば不具合が分かるのか」といった点が気になっている方もいらっしゃいますよね。
ですので今回は、機械式駐車場の故障や事故を防ぎ、利用者のみなさんに安心安全にお使いいただけるよう、普段私たちがどういった部品をメンテナンスしているかを、1つずつご紹介していきます。
こちらでは電装部品の修繕についてご紹介します。ぜひ最後までご覧ください。
リミットスイッチの修繕について
まず初めにご紹介する部品は、リミットスイッチとよばれるパレットや車の位置を検知するセンサースイッチです。
スイッチと聞くと普段お部屋の電気などに使われているスイッチをイメージされるかと思いますが、リミットスイッチはアーム部分が左右どちらかに90°曲がることによりスイッチが入る仕組みになっています。
車を載せたパレットがアームにあたって曲がり、カチッとスイッチが入ることにより、パレットが停まる仕組みで、停止位置を調整するための部品となっています。
ですので、リミットスイッチが壊れたり不具合が起きたりすると、
- パレットの停止位置がずれてしまう
- パレットが停止しない
といったケースが起こり、エラーが発生して業者が来るまでの間、装置を動かすことができなくなるといったトラブルが発生してしまいます。
不具合の発生頻度としては比較的高く、実際には
- 凍結によりアームが固まって戻らず、エラーが出てしまう
- スイッチ部分の経年劣化で信号の出方が安定せず、エラーが出てしまう
といったケースが見受けられました。
リミットスイッチは小さな部品ですが、機械式駐車場にとって非常に重要な部品で、壊れてしまうと停止位置がずれることによりパレットが傾き、車や装置の損傷や命に関わる重大事故につながりかねないため、しっかりとメンテナンスを行っています。
落下防止装置の修繕について
続いて2つ目に紹介する部品が落下防止装置です。
落下防止装置はその名の通り、万が一車を載せたパレットが落下してしまった時に、そのパレットを受け止めるための装置です。
メーカーや機種によって異なりますが、1パレットにつき2~4箇所についている部品で、万が一、装置の定位置にてチェーンやワイヤーが破断してパレットが落下した場合には、落下防止装置のアームの部分がパレットを受け止めるため、大事故になるのを防ぐ役割をしています。
通常の操作時は電力でアームの部分が動作することにより、パレットが動作するスペースが確保されて昇降する仕組みになっています。
ですが、経年劣化によりアームが動作しないという不具合が生じる可能性があります。
そうなってしまうと、落下防止装置自体の故障で大事故に繋がる可能性は低いですが、アームが邪魔をしたり、うまく信号が出ずにパレットが動かなくなるなどのトラブルにより、機械式駐車場の利用者の方が車を出せなくなる事態になりかねません。
ですので、私たちメンテナンス業者は、落下防止装置が正常に動作するかどうかの確認を必ず行っています。
基盤(制御盤内部)の修繕について
続いてご紹介する部品が、基盤とよばれる装置全体の動きを制御する役割をもつ部品です。
機械式駐車場はスイッチやセンサー類、モーターなどの色々な部品が連動して働きますが、この動きを制御するのが基盤の役割です。基盤だけで制御されている装置もありますが、他にシーケンサーやインバーターと呼ばれる制御装置と併用されている場合もあります。
この基盤は湿気に弱く、予めコーティングを施してあるのですが、劣化してくるとコーティングが弱まり、湿気の多い日や台風の日などに、信号の伝達が上手くいかず不具合が発生する恐れがあります。
機械式駐車場の基盤が故障してしまうと、
- 装置が動かない
- 同時にパレットが動き出してしまうなど、異常な動作をする
などの重大事故が起きてしまう危険性があります。
基盤の劣化具合は通常点検では分かりにくく、不具合が出てから基盤の劣化が原因と発覚するケースが多いです。一度不具合が発生すると、交換をするまで不具合が頻発する可能性があります。
「台風時の機械式駐車場の注意点と対策について」では、台風時は機械式駐車場を使用しないように注意喚起していますが、万が一装置を操作して不具合が起きてしまった場合は、基盤の誤信号によるトラブルの可能性も考えられますので、メンテナンス業者に連絡し、対応してもらうようにしましょう。
操作ボタンの修繕について
続いてご紹介する部品が、操作ボタンです。機械式駐車場を普段利用している方ならお分かりかと思いますが、パレットを呼び出す際に使用します。
パレットには番号がついていて、その番号の箇所を指定してパレットを呼び出すのですが、よく押すボタンなどの反応が悪くなり「押せなくなる」「押しても誤った数字で反応してしまう」などの不具合が起こる場合があります。
誤った数字で反応してしまった場合、違ったパレットが呼び出されてしまうケースが考えられますが、この不具合によって大事故につながるような心配はありません。
ただし、古い機械式駐車場を使用している場合には、メーカーの方ですでに廃版となり、同じ操作盤を入手できない場合があります。
そうなってしまうと、新しい操作盤を取り付けて再び使用できるようになるまで、早くても3ヶ月ほどかかってしまうことが多いです。
なぜそんなに交換するまでに時間がかかるのかというと、新しい操作盤を取り付けて再び使用できるようにするには、先程ご紹介した基盤やシーケンサーなどの制御部品とセットで交換しなければならない場合があるためです。
シーケンサーとよばれるコントロールシステムは、プログラミングによってコントロールされているので、その部品を用意するだけではなく、既存の機械式駐車場を操作できるようにプログラムを組み込んでもらう必要があります。
納期が長い分、その期間機械式駐車場が使用できなくなることで、どこに車を駐車しておくかといった問題も起こってしまいます。
セットで交換しなければいけないのか、もしくは操作盤だけの交換で済むのかは、メーカーや型番によって大きく異なります。
後継部品としてどんな部品を使えばいいのかなどは、普段保守点検をお願いしているメンテナンス業者が把握されていることと思いますので、相談してみるとよいでしょう。
最後に
機械式駐車場の修繕部品の大まかな種類についてご紹介しましたが、修繕を行う場合には、ほとんどの場合、車の移動が必要になってきます。
「機械式駐車場の保守契約(1)POGとフルメンテナンスの違い」でも「予防保全」と「事後保全」という修繕の考え方についてご紹介しました。
部品の故障が発生したら交換する「事後保全」の考えに基づいて修繕を行っていく場合には、部品が故障したら必要に応じてその都度車を移動させ、修繕を行う必要があります。
「予防保全」で計画的に全ての修繕を行っていく場合には、「事後保全」の考え方に比べて目先のコストはかかってしまいますが、不具合の発生による装置の使用停止を防ぐだけでなく、車の移動はまとめて実施出来るというメリットもあります。
使用している機械式駐車場の状況や修繕時期によって予算も異なってきますので、修繕の考え方についてはメンテナンス業者とよく相談して決めるとよいでしょう。
また、駆動部品・その他の修繕については「修繕部品の大まかな種類について解説~駆動部品・その他編~」でご紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
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