こんにちは。
パーキングドクタープラス編集部です。
都心部のマンションには機械式駐車場がよく使われていますが、マンションの管理組合は自分たちの機械式駐車場に合った適切なメンテナンスを行う必要があり、基本的にはメンテナンス業者にメンテナンスを依頼します。
しかし、法的に定められた点検義務ではないため、管理組合側が機械式駐車場の修繕方法やどういったメンテナンス契約を結ぶかを選定しなければなりません。
例えコスト面において魅力のあるメンテナンス業者でも、実際のメンテナンスの質もきちんと見極める必要があります。
「修繕部品の大まかな種類について解説~電装部品編~」や「修繕部品の大まかな種類について解説~駆動部品・その他編~」では、私たちメンテナンス業者が普段どういった部品を点検・交換しているのかをご紹介しているので、まずは初めにそちらをご覧ください。
そして今回は、適切なタイミングで部品交換ができなかったために事故が起こってしまったケースや、その事故原因について詳しく解説します。
機械式駐車場の事故のリスクを理解し、今後自分のマンションの機械式駐車場をどういった方法で修繕していくべきなのかを考えながら、ぜひ最後までご覧ください。
事故例その1 パレットの傾きとその原因
こちらは、パレットが傾いてしまった事故の様子です。
このままだと、いつ車が落下してもおかしくない状況です。
駐車装置には落下防止装置がついているのですが、これはあくまで駐車定位置にある時に落下を防止する装置で、写真のように定位置にはない動作中の落下は防げません。
このような傾きが発生する原因はいくつかあり得るのですが、主にチェーンに劣化が見られる場合に発生することが多いです。
これらの写真は、チェーン不具合の一例です。
この写真のケースの場合、本来なら左側の写真のようにチェーンが真っ直ぐ塩ビ管に入るのですが、真ん中の写真のようにうまくチェーンが塩ビ管に入らず、ダマになってしまいました。こうなるとチェーンがうまく動かないせいで、パレットが傾いてしまうケースが発生します。
これは右側の写真のように、チェーンが錆や経年劣化により「キンク」という、よれて固まった状態になってしまうことが大きな原因です。
キンクが発生したチェーンは、メンテナンスによって多少ほぐれますが、誤作動や破断に繋がりかねないため、早急な交換が必要です。
また、キンクという症状自体は見た目でも分かりやすいのですが、キンクが発生していなくてもチェーン内部が劣化していることもあります。チェーン内部の劣化状況は、チェーンの外側からではわからないため、メンテナンスで判断できる劣化状況には限りがあります。
キンクが発生していなくても、内部の劣化により誤作動や破断に繋がるケースもあり、パレットに傾きが発生した際は甚大な被害が想定されますので、チェーンは不具合が発生する前に全数交換する「予防保全」での修繕方法が望ましいです。
※修繕の考え方には「予防保全」と「事後保全」の2通りの考え方があるので、詳しく知りたい方は「機械式駐車場の保守契約(1)POGとフルメンテナンスの違い」をご覧ください。
事故例その2 車輪の脱輪とその原因
こちらは、パレットを横行させるための車輪がレールから脱輪した様子です。
車輪をよくご覧いただくと、外側の部分がかなり摩耗している状態なのがお分かりかと思います。
また、右の写真には横行レールも写っていますが、斜めに傾いている状態です。
今回のケースについて、どうしてこのような状態になるのかを、図を使って詳しくご説明します。
図の青い部分が車輪で、レール上の様子です。
①が正常時です。レールに対して車輪の力が均等に加わっていますが、経年劣化により②のようにレールがゆがんでくると、車輪の外側部分に負荷がかかるようになり、最終的に③のように車輪が削れていったと考えられます。
これはレール・車輪の劣化の一例ですが、横行車輪の軸が摩耗して傾きが発生するケースもあります。
このような経年劣化は、放置するとどんどん悪化していき、最終的にはパレットごと落下してしまう恐れや、最悪の場合には命に関わる重大事故につながる恐れもあります。
このような事態にならないため、メンテナンス業者はマンションの管理者に、最善のタイミングで交換する必要がある部品の説明や修繕方法をご提案します。
しかし、実際に不具合が頻繁に発生している場合や、メンテナンス費が多額にも関わらず、部品の交換や修繕が適切に行われているのかどうか分からない場合など、そのような業者にメンテナンスを依頼している場合、疑念を抱かれている方もいるかもしれません。
メンテナンス業者によって作業員のメンテナンス技量に個人差があったり、交換する必要性がない部品まで交換し、メンテナンス費が多くかかっていたりする場合には、今後も適切なタイミングでの修繕が行われない恐れや、安全性にも問題があるといえます。
メンテナンス業者は価格だけで判断せず、人材教育の方法や過去の実績など(施工写真など)を見せてもらうと判断材料の1つになるかもしれません。
また、緊急時の迅速な対応や、作業員同士で情報が共有されているかなども、信頼できる業者であると判断できるかと思います。
メンテナンス業者の対応にお困りでしたら、まずはセカンドオピニオン的に複数の業者に相見積もりを取ることをおすすめします。
最後に
今回は、機械式駐車場の事故リスクについて事故発生例を挙げてご説明しました。
しかし、実際は機械式駐車場の種類や状況によって、どういった事故が起こりうるのかも大きく異なってきます。
手遅れにならないためにも、今後どういった修繕を行っていくべきか、メンテナンス業者とよく相談し計画していくと良いでしょう。
もし、機械式駐車場の故障が頻繁に起きているなら、それはきちんとメンテナンスされていない可能性があります。
ぜひ一度、セカンドオピニオン的に別のメンテナンス業者に診てもらうことをおすすめします。
また、優先的にどういった修繕を行っていくべきなのかを詳しく知りたい方は「修繕の優先度を判断する要素について解説」をご覧ください。
パーキングドクタープラスでは、マンション駐車場に関する有益な情報をどんどん発信して参ります。
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